那須への小旅行---「近衛文麿 黙して死す」(鳥居民)と「編集者という病」(見城徹)と「グラビアの女」(林真理子)

4日・5日は、家族4人で車で那須に出かけた。10時に自宅を出て、着いたのは午後1時。

エピナール那須というリゾートホテルはもう10年以上も会員となっているので、年に数回訪れる。13階建ての本館と別館、そして温泉、テニスコート、分譲マンション、陶芸などのを楽しめる別棟などがあり、常連となっていることもあり勝手もわかりわが家にとっては快適な場所だ。

ここも、バブルの崩壊もあって会員権の償還ができなくなって、アメリカのシティグループが支援して最近再出発した。結果的にお金は返ってこなくなったが、代わりに9年ほど使える期間が延びることになったので、今後も通うことになりそうだ。


このホテルには、那須の母という占師がいて人気がある。

妻と娘は毎回見てもらっているが、今回は私と息子がみてもらった。

生年月日と手相で将来を占ってくれる。私と息子は六白金星なので、基本的には同じ運勢で、守りの2年目であるので、慎重にものごとを運ばねばならない。

手相は全く違った。私ははっきりとした男性的な手相で、向上心、運命線、生命線などが強いということだったが、息子の方はむしろ女性的で繊細な芸術家タイプで、職人的な仕事が向いているという宣託だった。那須の母の分析には思い当たる節が多く、またアドバイスも納得できる部分が多かった。


このホテルの名物は、夜9時から行われるコンサートである。広いロビーがコンサート会場に変化する。昔、ブルーシャトーで一世を風靡したブルーコメッツのメンバーが働いていて、夜はブルーシャトーをギターで奏でる。また今はフロアーを担当していてもう少しで歌手デビューというところまでいった三条正人似の歌い手が「君は心の妻だから」を歌う。司会は売店の売り子という具合で、楽しい時間をプレゼントしてくれる。愉快な企画だ。


ホテルの部屋から見ると悠然としたなだからかな那須岳と色とりどりの緑の雑木林が、穏やかな気分にさせてくれる。春霞のかかった景色は素晴らしい。


今回は、このホテルの中でゆっくりして出歩かないことにした。



滞在中、本を3冊読んだ。

近衛文麿 黙して死す」(鳥居民・草思社)は、日本が戦争を始めた責任は「木戸幸一内大臣にあり、首相だった近衛にはない」という史観で書かれた本である。木戸内大臣とマッカーサー司令部の対敵情報局のノーマン課長が仕組んだ陰謀で、開戦の責任と終戦の不手際の責任を近衛にとらせ、逮捕直前に近衛を自殺に追いやったという史観で書かれている。

この鳥居民という著者は、「シリーズ昭和20年」という大型シリーズを刊行中で、第一部は14巻中、11巻まで出していて、昭和20年の一日一日を丹念に綴っている。たしか全体では34巻ほどになると聞いたことがある。完成したら貴重な資料となるだろう。

著者は1929年生まれで、太平洋戦争の真実をことこまかく追っている。膨大な資料を読み込んだうえで、自らの信じるストーリーを語る。その部分は「思っている」「はずである」「「のではないか」などの表現が多い。日本と中国近代史の研究家なので、はしょっている部分が多く、いきなり事実関係が出てくるので知識が少ないと読みづらい面もあるが、興味深い事実をたくさん知った。


「編集者という病」(見城徹太田出版)は、幻冬舎という新興出版社を立ち上げ、10年間で9本のミリオンセラーを出し、ジャスダックヌに上場した風雲児の自伝的な作品である。

尾崎豊、山際淳二、中上健次石原慎太郎松任谷由美村上龍坂本龍一五木寛之重松清などの作家との交遊を紹介しあがら、編集者であることを語っている。見城は私と同い年であるが、随分と濃い人生を生きていると感じた。作家との付き合いは半端ではなく、編集者としての気概や戦略眼に感銘を受ける内容だった。この出版社は見城という魅力的なリーダーが率いている限り今後も世間の耳目を集め続けるだろう。

表現者にとっては一番書きたくないものが、編集者には一番書かせたいことであり、

 それこそが黄金のコンテンツになる、、

・売れるコンテンツを満たすものは必ずヒットする

  オリジナリティ・明快・極端・癒着

・大家の三人とこれはすごくなると思う新人を押さえれば、真ん中はむこうから入ってくる

・売れなければ読者にとって必要なかった商品なのである


「グラビアの夜」(林真理子)。

編集者・スタイリスト・ヘアメイク・カメラマン・マネージャー・モデルら現代の若者の心情と生活、生態を林真理子が達者な軽い筆致で描いた作品。現代の気分を上手に表現しているので、共感を呼ぶだろうと思う。林真理子が若い人に人気があるのも当然という気がする。