「考える社員」は図で育つ

ビジネスマンから大学教員へ転身して10年以上経った。
この間頼まれたものはすべて引き受けてみた。中央省庁から県、市町村の多数の行政の委員を引き受け(タテ)、産業界では自動車・製薬・電力・遊戯・医療・サービスなどあらゆる業界と接触した(ヨコ)。そして各現場の抱えている問題を観察してきた。  
その結果、日本のあらゆる組織の問題は相似形となっており、その核心は「考える力」の欠如だということがわかった。どうやったら「考える力」が育成できるのか、これが産業界はもちろん行政や教育界も含めた日本の中心的な課題である。これを嘆く識者はいるが今なお解決策は具体的に提示されてはいない。

「文章と箇条書き」という従来の方法論は、考えることが苦手な日本人をつくってきた。わかっていなくてもごまかすことができる文章という表現手段と、ただ並べるだけで、大きさ・重なり・関係を表現することができない箇条書きを駆使したコミュニケーションスタイルでは、「考える社員」は育たない。

そこで議論に悩まされる文章至上主義の呪縛から逃れ、本質的な問題解決を図るために「図解思考」を薦めたい。図解は全体の構造と部分同士の関係を明らかにすることができる。いわば関係学である。「考える社員」は図で育つ。自らの足元は誰よりも深く掘りつつ一方で全体を鳥瞰できる目を持つ「考える社員」がどのくらいの割合でいるかが、今後の企業の競争力の源泉となるだろう。

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財団法人・社会経済生産性本部の発刊する8「生産性新聞」一面の「一言」というコラムへの執筆依頼を受けて書いた文章が、6月5日号に載っている。
有識者のエッセイ欄として『一言』という欄で、テーマは特に定められていなくて、社会、経済、教育、国際など幅広い視点から、600字でご自由に執筆する欄だ。
企業人が読むだろうから、以上の内容にしてみた。