「日本への回帰」という印象--中谷巌さんの講演(多摩大リレー講座)

昼からリレー講座の本のインタビューを日経BP社の担当者から2時間ほど受ける。午後は第10回リレー講座の中谷巌さんの講話を聞く。夜は東京ガスの友人とその仲間の女性たち(一人は多摩大の非常勤講師もお願いしている方)と新宿で食事。
中谷巌さんはこの3月まで多摩大学の学長をつとめていた方だ。経済学者として著名だが、最近は文明論に傾いているようで、テーマは「日本文明の将来」だった。
「アメリカかぶれの経済学者だったが、最近ちょっと待てよ、と考えるようになった」と本人が述べたように、あきらかにスタンスが変化していると感じた。日本という独自の文明の意味と意義を強調した講演だった。
戦後のマッカーサーは日本人を馬鹿にすべく歴史・地理・修身(道徳)の三教科を実質的に廃止した。本当の歴史を教えなかった。日本の神話など日本の中心的ストーリーを教えなかった。その結果、日本人は歴史、文化、宗教を忘れた国民になった。
日本文明の特色は、一国家一文明で1万2千年継続した安定した文明社会であること、自然と共存共栄した縄文時代が一万年続いた文明であること、神仏習合など巧妙な仕組みを持っているため独自の宗教観を持っていること(世界を救う)、権威と権力の分離による柔軟な社会の形成、庶民の当事者意識の高い文明であること、以上5点である。日本は外国との付き合いは「日本化プロセス」の連続だった。自動車、アニメなどもその典型。それは吸収と付加価値が本質だ。だから安定的、長期的視点が養われた。今後は文明基盤がブランド力を決めていく。
以上が要旨だが、中谷さんは以前はアメリカ型経済社会の礼賛者だったと思うが、こjこ数年で宗旨替えをしたように感じた。日本文化研究センター(日文研)の先生たちがルネッサンスセンターでの講座に相次いで出講しているそうだが、その影響も大きいのだろう。日本への回帰を始めているとの印象を持った。
神話、歴史、和歌・俳句・能・お茶、逝きし世の面影、文明論の概略(福沢諭吉)、、、、。