「2009年の総括と2010年への基本的視座」−−寺島実郎講義のまとめ

寺島実郎監修リレー講座の秋学期も今日で最終回。社会人受講生の全回出席者は67名を数えた。

  • COP15の衝撃。何も決まらなかった。25%削減の鳩山演説にも無反応。途上国に雑言を浴びた。
  • イラクにおける米軍兵士の死者は12月31日現在で4369人。アフガンは949人。合計5318人のアメリカの若者が芯だ。
  • 正統性を失いつつあるアメリカ。
  • 世界を回って、日本ほど暗い雰囲気の国はなり。
  • 2009年の世界経済マイナス2.2%。(米国マイナス2.5%、日本マイナス5.3%、ロシアマイナス7.9%、中国+8.5%、インド+6.6%)
  • 2010年のコンセンサス(エコノミスト予測の平均)予測ではプラス2.9%。(米国+2.7%、EU+1.1%、日+1.5%、中国+9.6%、インド+7.7%、ロシア+4.1%)
  • 景気回復は、財政出動と金融緩和で、再びマネーゲームが始まっているのが理由。金の行き場を探している。石油価格の上昇(2008年夏147ドル・2008年末34ドル・2009年末75ドル。乱高下)
  • 09年1-11月の日本の貿易総額。米国13.6%、中国20.5%、大中華圏30.6%、アジア49.5%。
  • 世界はネットワーク型で発展している。大中華圏とユニオンジャックの矢(ロンドン、ドバイバンガロールシンガポールシドニー
  • シンガポールは、大中華圏の南端でASEANとのつなぎ、ユニオンジャックの矢に位置。バーチャル国家としての先行モデルだ。。システム、ソフト、技術、医療、バイオなど、、。
  • 日本。20008年の雇用者5539万人のうち年収200万円以下(ワーキングプア)は1305万人(非正規雇用者の74%)。自営業で200万円以下と正規雇用者で200万円以下420万円。これらをあわせると、200万円以下で働く人は労働人口6376万人の34%にあたる2196万人。200万は時給1000円レベル。
  • 生活保護を受けている人は159万人で、平均支給は173.9万円。失業保険を受けている人は61万人で、支給は152万円。200万円の層とそれほど違わない。
  • 勤労者家計の可処分所得は減り続けている。2000年は月47.3万、2008年は月44.3万、2009年1-7月は41.2万。これは年収ベースで73.2万円の減少にあたる。また企業のフリンジベネフィット(寮・社宅・保養所、、)も減少。社会にフラストレーションがたまり、政治への期待がが増加。家計への直接給付への関心が高まり政権交代へつながった。
  • 新政権でみえてきたこと。公共投資マイナス18%(コンクリート)、福祉・教育プラス10%(人)。子供を誰が育てるのか。社会が育てるという合意が形成されているのか疑問だ。これによって親子関係など社会の姿も変わってくる。官から政へというが、政治家のレベルの問題がある。
  • 日本。民主党政権の弱点は産業政策がないことだ。項目が並んでいるだけ。政策論(プロジェクトエンジニアリング)が大事だ。
  • 日本創生のシナリオ。次世代ICT。地上デジタルは南米は日本方式を採用したが、ハードは韓国勢が席巻している。光ファイバー網は基幹インフラとして9割敷設が終わっているが、家庭への接続でみると20%台。ラストワンマイル問題。ここを国家としてすみやかにやり高度情報化社会に立ち向かう・このためNTTを核とする国策特殊会社を設立し社債発行によって電撃的に行うプロジェクトが進行(税金を使わない)。
  • 小中高生に電子教科書を配付し、高度ICT人材養成への本格的な布石を打つ。全ての教科書を採用すればよい。その教科書から百科事典、専門家の意見にもとべるようにする。ランドセル姿もなくなるだろう。
  • 日本はエネルギーと食料を海外に依存してきた。技術によって食糧問題(カロリーベース自給率40%)を解決していく、腐らせない、移動できるようにする、バイオ技術の応用、、株式会社農業に人材と技術を投入。食料輸入は6兆円。輸出はいつのまにか5000億円に(ドバイでも日本の刺身が食べられる)。3-4年で1兆円を越すだろう。
  • エネルギー。日本は国土面積は61位。しかし領海と排他的経済水域を合わせた海洋面積では6位。海洋基本法と宇宙開発基本法超党派議員立法で成立している。09年10月に宇宙開発戦略本部がスタート。この二つは相関がある。日立の準天頂衛星の打ち上げで正確な資源探査が可能。11カ所の海底熱水鉱床の発見。各種資源のポテンシャルあり。
  • 分配の議論から、自動車以降のプロダクトサイクルに向けて構想力を持って立ち向かわなければならない。