予告!「達人に学ぶ 知的生産の技術」(知研編著・NTT出版刊)

4月10日刊行の本が進行している。NPO法人知的生産の技術研究会が創立40周年を機に企画した出版の一つだ。「知の現場」(東洋経済新報社)は21人の知的生産者の取材だったが、こちらの本は9人と少なく、その分それぞれの方の個人史も入っているなど内容が濃い。私自身、蟹瀬誠一さんを除いてインタービュアーとして全員に取材を行っているが、どの方からも強い刺激を受けた。私は取材も受けているが、編著者であるNPO知研の代表者として「まえがき」も書いているので、それを紹介する。
もうアマゾンでは予約ができるようになっているようだ。表紙のデザインもおしゃれで本ができあがるのが楽しみだ。
http://www.amazon.co.jp/%E9%81%94%E4%BA%BA%E3%81%AB%E5%AD%A6%E3%81%B6%E3%80%8C%E7%9F%A5%E7%9A%84%E7%94%9F%E7%94%A3%E3%81%AE%E6%8A%80%E8%A1%93%E3%80%8D-NPO%E6%B3%95%E4%BA%BA%E7%9F%A5%E7%9A%84%E7%94%9F%E7%94%A3%E3%81%AE%E6%8A%80%E8%A1%93%E7%A0%94%E7%A9%B6%E4%BC%9A/dp/4757122438/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=books&qid=1269726398&sr=8-1

以下は、「達人に学ぶ 知的生産の技術」(NTT出版)ご登場いただいた方々。

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「まえがき」

梅棹忠夫先生の歴史的名著「知的生産の技術」(岩波新書)が世に出たのは40年以上前の1969年だった。この本の与えた衝撃はすさまじく、ロングセラーとなって、広く深く、そして長く、今もなお社会に大きな影響を与え続けている。
梅棹忠夫先生によれば、「知的生産とは、頭をはたらかせて、なにかあたらしいことがら――情報――をひとにわかるかたちで提出すること」であり、この本でも「工業の時代に続く次の時代は情報産業の時代になり、その中でもとくに知的生産による部分」が大切になると予言している。まさに今日の情報社会の本質を見事に言い当てているのは驚きである。
この本が与えた影響の一つが、今はNPO法人となっている「知的生産の技術」研究会(略称・知研)の誕生だった。1970年に八木哲郎氏が設立した知研は当時の知のスター達のセミナーを毎月行い、そのエキスを1978年に初めて「わたしの知的生産の技術」(講談社)という本として出版、好評を得て「続」「新」と続けて出版を重ね数十万人の読者がこのシリーズを手にしている。
「わたしの知的生産の技術」には「八木さんのような人物の出現だけでも、わたしの「知的生産の技術」という本は意味があったといえるのかもしれない」との梅棹先生の序文がある。
現時点で振り返ってこの三冊の本の目次を眺めてみると、紀田順一郎加藤秀俊羽仁五郎外山滋比古小中陽太郎渡部昇一竹内均小室直樹、岡村昭彦、西堀栄三郎、今西錦司竹内宏加藤栄一大岡信堺屋太一桑原武夫渡辺京二唐津一、長谷川慶太郎、飯田経夫などの錚々たる方々が並んでいるが、よくこれだけの知の巨人が毎回出講して下さったと驚きとともに改めて感謝の念が湧き起こってくる。

さて、今回ご登場願った方々は、まさに現代の知の最前線を疾走する人達である。私自身ほとんどの方々のインタビューに参加したが、時代や社会を鷲づかみにするキーワードの連続であり、目を開かされる経験を何度もすることになった。
また、知的生産を巡る環境の大きな変化であるIT技術の爆発的な進展が、知的生産の方法と技術を一変させつつあることを改めて確認することになった。
彼らはそれぞれ独自の個性で際だっているのは間違いないが、やはり知的生産に取り組む姿勢や心構えなどを中心に共通する部分も多い。それは次にあげるような点である。
世の中がどう変わっていくかについての独自の見識を持っている。自らの環境を活用して人生を自らの手でつかみ取っていく姿勢がある。自ら学び自ら育つ姿勢がある。自らの進むべき方向について明確な方向感覚を持っている。独特の見方、独自の思考など強烈なオリジナリティを追求している。

私自身は、人はそれぞれの「生い立ち」「出会い」「出来事」から、人生でもっとも大切にしたいものを「価値観」として形成していくという仮説を持っている。今回のインタビューでは生い立ちから現在までの個人の歴史を語ってもらえるように質問を構成し、取り組んでいるライフワークを持つに至った経緯などを確認することにしたのだが、こういった仮説の裏付けを得た感じもある。
多彩な知のプレーヤーが生み出した多種多様な知的生産と、それを導き出した独自のやり方、それを誰もが一定の訓練を施すことによって獲得できる「技術」に高めること、そういった継続的な努力の積み重ねが情報社会の進化に向けて豊かな実りをもたらすと確認する良い機会になった。
知研の特別顧問をお願いしている梅棹忠夫先生がアドバイス下さったように「「わたし」に即しつつ、「わたし」をこえて多数が共有できる普遍的な技術体系の開発という目標」への道を歩んでいかねばならないと改めて思った。

知の最前線で活躍している登場者たちの熱い想いが読者に届くなら編者として幸いに思う。


         久恒啓一NPO法人知生産の技術研究会理事長)