孫崎亨「戦後史の正体」(創元社)-対米追従と自主独立の戦後史の内幕

日本の戦後の外交には、対米追従と自主独立の二つの路線の相克が続いている。
米国の日本支配の実態について論じるというタブーに挑戦した意欲作だ。
このことを勇気をもって語るべきは外務省のOBだという認識の下で、著者・孫崎亨(元外務省・国際情報局長)はこの本を書いた。

戦後史の正体 (「戦後再発見」双書)

戦後史の正体 (「戦後再発見」双書)

最近の民主党政権の失敗、小沢一郎起訴事件、尖閣北方領土問題など、この視点で説明されると腑に落ちることが多い。日本の気概の喪失、精神的頽廃は、実に根が深いことを思い知らされる。
この本は8月10日の出版で、創元社の「戦後再発見」双書の第一弾だ。今から話題になるのは間違いない。

対米追随派。
 吉田茂池田勇人三木武夫中曽根康弘小泉純一郎。海部、小渕、森、安倍、麻生、菅、野田。
自主派。
 重光葵石橋湛山芦田均岸信介鳩山一郎佐藤栄作田中角栄。福田たけ夫。宮澤喜一細川護煕鳩山由紀夫

  • TPPの狙いは日本社会を米国流に改革し、米国企業に日本市場を席巻させることです。
  • 鳩山首相をつぶしたのは、直接手を下したのは米国人ではなく、日本の官僚、政治家、マスコミです。
  • 小泉首相は、日本社会と日本の経済システムを米国流に変えることでした。
  • 新安保条約は全世界を舞台にした日米の軍事協力を目指すことになった。
  • 正論でも、群れから離れて論陣を張れば干される。大きく間違っても群れの中で論をのべていれば、常に主流を歩める。そして群れの中にいさえすれば、いくらまちがった発言をしtれも、あとで検証されることはない。これが日本の言論界です。
  • CIAは日本の経済力を米国の敵と位置づけ、対日工作を大々的に行うようになります。
  • ソ連の脅威があったからこそ、米軍の駐留が必要だったはずです。
  • 冷戦後、どの国が米国にとって最大の脅威でしょうか。それは日本です。
  • 日本経済の低迷は1985年のプラザ合意から始まります。、、円高によって日本経済の空洞化が始まります。
  • P3Cというソ連向けの対潜哨戒機を日本に100機以上買わせた。これは米国の本土防衛のための金です。
  • アメリカが田中角栄首相を葬ったのは、日中国交回復が米国を怒らせたからです。
  • ニクソン訪中のあと、尖閣諸島について国務省は日本の主張に対する支持を修正し、あいまいな態度をとるようになった。
  • 沖縄返還と同時に行った繊維の密約を佐藤首相が破った報復の一つが、ニクソン訪中に事前通告しなかったことです。
  • 安保闘争の金は財界からきた。それは岸政権打倒が目的だった。
  • 行政協定は「地位協定」と名をかえて、現在までそのまま続いています。
  • 1960年代まで、CIAを通じて自民党に政治資金が提供され続けた。
  • ロシアとは北方領土、韓国とは竹島、中国とは尖閣。解決困難な問題が残されているが、これは偶然ではない。米国は解決不能な紛争のタネを埋め込んでいるのです。北方領土の北側の国後、択捉は第二次大戦末期に対日参戦の大書として米国がソ連に与えた領土です。
  • 地位協定によって軍人、家族の罪も裁くのは米国。実質的な治外法権を与えている。
  • ダレス「米国が望むだけの軍隊を、望む場所に、望む危難だけ駐留させる権利を確保する。それが米国の目標である」
  • 外務省の官僚だけでなく、学者も自主的な発言ができないんは、米国に抵抗してもいいことはないからです。
  • 石橋蔵相が米軍の駐留経費削減を要求した。そこにはゴルフ場や特別列車の運転、さらには花や金魚の注文書まで含まれていました。
  • 労働運動も占領軍のもとで育成された。
  • 占領軍の検閲は、日本人の金で日本人が日本人を検閲し、言論統制していた。
  • 江藤淳「戦前の軍部よりも占領時代の方が自由がなかった」
  • ひとたび自主独立の精神を喪失すると、ふたたびとりもどすがいかにむずかしいか。
  • 米軍駐留に関する最も重要な部分は政府同士の合意だけで結べる行政協定によって結ぶことを米国は求めた。
  • 検察は米国と密接な関係を持っています。特捜部はGHQの管理下でスタートした「隠匿退蔵仏師事件捜査部」が前身。東京地検特捜部は、日本の正当な自主路線の指導者を意図的に排除する役割を果たしてきたのではないか。
  • 米国の情報部門は日本の検察を使ってしかける。これを利用して新聞が特定政治家を叩き、首相を失脚させるというパターンが存在する。
  • 日本国憲法は、米国が作成した草案を日本語に訳し、少し修正を加えたものです。
  • 占領中の対米追随路線が独立後も継続され、美化されて、戦後60年以上も続くことになった。
  • ブレジンスキーは日本をアメリカのセキュリティ・プロテクトレイト(安全保障上の保護国)と書いています。
  • 戦後日本外交の対米追随路線のシンボルが吉田茂。自主路線のシンボルが重光葵です。
  • 蝶報担当というのは、つまり非合法手段の担当ということです。
  • 公用語は英語。違反は軍事裁判。通貨は米軍の軍票(紙幣)」という最初の布告案を重光はマッカーサーと面会して葬った。