山梨県立美術館ミレー館-「裸体画はいっさい描かない」

山梨県立美術館ミレー館。
この美術館がオープンした1978年、ミレーの「種をまく人」と「夕暮れに羊を連れ帰る羊飼い」を驚くような高額で購入したことで賛否がうずまいて大きな話題になった。
その美術館は、その後30年以上にわたって、ミレーとその仲間たち・バルビゾン派の作品をコツコツ集めてきた。その結果、70点のミレーコレクション、を有した「ミレー美術館」に成長した。油彩画では初期から晩年まで、そして版画もそのほとんどを有している。内外の批判に耐えながらここまで一貫して続けてきたのは見事だ。県立の美術館でそのようなことは難しいことだったろう。

ジャン・フランソワ・ミレー(1814-1875年)は、裕福な農家に生まれた。父は地主でありその土地の名士だった。絵を志したミレーは22歳でパリに出るが、女性の裸体を描いて生活をしていた。ある時、若者たちから「裸の女しか描かない画家」と呼ばれて、それ以降裸体を描くのをやめている。そして農民画を描くことを志とし、パリ郊外のバルビゾン村に移住する。ルソーなどの画家がこの村に住むようになり、バルビゾンは芸術家村と呼ばれる。

社会を変えるには (講談社現代新書)

社会を変えるには (講談社現代新書)

517ページと新書としては厚い。内容も充実している。博識の著者は縦横に知識を開陳するのだが、書きぶりが実に解りやすい。説明がうまい。
「いま日本でおきていることがどういうことなのか、社会を変えるというのはどういうことなのか。歴史的、社会構造的、あるいは思想的に考えてみよう」というのがこの本の趣旨だ。

原発の問題と、市民運動としてのデモを材料としている。著者の結論は、原発はコストが高く、工業化社会の産物であり、勇気ある撤退をすべきである、ということになる。
デモのような社会運動にかかわるプロセスで、参加と対話が進み、社会が変わっていく。社会を変えるには、あなた(読者)が変わること、変わるには動くこと、と忠告する。

この本は、私のテーマでもある「社会的合意形成をいかに行うか」とも問題意識が重なるので興味深く読んだのだが、さて、その方法については、対話と弁証法が有効だと言っているにすぎないようにも感じる。
最近、著名な学者の有名な理論や高説を読みながら感じるのは、説明は分かったが、それではどうしたらいのかという問いに答えきれてはいないということだ。「方法論の欠如」という病が蔓延しているのではないか。
「社会的合意形成の方法論」というテーマは、2005年に「合意術」(日経)という書物を著しているが、もう少し深めてみようか。大きな普遍的なテーマである。

  • 知研の八木さんと調布でランチ。来年度の方針の確認。