「脳力のレッスン4・リベラル再生の基軸」(寺島実郎)出版記念会

寺島実郎さんの「脳力のレッスン4・リベラル再生の基軸」(岩波書店)の出版記念会が、丸の内の日本工業倶楽部で行われた。

冒頭のあいさつと懇親会でのあいさつは、岩波書店の岡本社長、TBSレビ・サンデーモーニング関口宏さん、評論家の佐高信さん。浅野史郎さん。民主党田中眞紀子代議士、古川代議士、新妻代議士などの顔もみえる。他には千本さんなどの経営者も。

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リベラルを考える。
リベラルとは決めつけない思考のスタンスと歴史の進歩を信ずること。
世界史からグローバルヒストリーへ。立体的世界史、

  • 1:人間とは何か。
    • チンパンジーとDNAは1.2%の差。それは言語・意思疎通にかかわる能力。コミュニケーション能力。
    • 遺伝子か、環境か、と決めつけない。  環境を通じた遺伝子の変化ということではないか。
    • 人類はグローバルな存在であるが、環境適応の中で民族の個性が生まれた。
    • 純粋日本人などいない。10代前(江戸中期)2046人。500年前(室町から戦国)では209.7万人。自分自身の血の中にはユーラシアの血が混じっている。プチ・ナショナリズムは狭い。
  • 2:歴史の進歩とは何か。
    • 5300年前のアイスマンの真実。2500年前のブッダ孔子。2000年前のキリスト。上位価値への目覚め。
    • トインビーの歴史の教訓。穏健な態度。植民地主義はいけない。
    • 市井三郎「歴史の進歩とは何か」。不条理の組織的・制度的な軽減。不条理とは本人に問われる必要のないことで苦しむこと。
    • 新たな視界「グローバルヒストリー」。リベラルは全体知に向かう。人類の誕生から現在まで。テーマの幅広さと空間の広さ。ヨーロッパ中心世界観の相対化。近代以降の歴史の相対化。諸地域間の相互連関。
    • 世界宗教は自己犠牲と愛と赦し(精神性の偉大さ)。孔子「それ、恕か」。キリスト「愛と赦し」。ブッダ「涅槃」。
    • 薄皮を剥ぐように、ものごとの相関がわかってきた。相関、相対、つながり。決めつけない。
  • 3・リベラルとは何か。
    • 近代と真剣に向き合うこと。
    • 17世紀オランダへの理解が欠かせない。アメリカにはオランダの遺伝子(連邦制と宗教の自由)。デカルトの「我思う、ゆえに我あり」は個に目覚めた瞬間。そこから自由・平等・博愛が生まれる。
    • 近代=科学技術革命+デモクラシー+資本主義の原点。
    • デモクラシーは、国家資本主義による近代化、マッカーサーによる御仕着せ民主主義、など与えられた民主主義。理解と共鳴が不足。腹に落ちていない。何か苛立つような問題が生じると国家主義の誘惑に陥る。
    • 資本主義の原点には健全な精神(勤勉)があった。売りぬく資本主義が跋扈。今のアベノミクスは正気か。変化球ピッチャー。国境を越えたマネーゲームの対策が出てきている。渋沢資本主義。健全な思想。資本主義の原点を忘れない(勤勉・努力・誠実)。
    • 科学技術。反原発は文化人に多い。「等身大の技術ではない。化石燃料の再利用まではいい。原子核技術は傲慢な技術。原爆。福島の現状を見よ。」。私は近代主義者。技術は善悪双方の肥大化のポテンシャルが高まっていく。IPSなどの生命科学は神の領域への挑戦という面、危険はあるが、再生医療の可能性もある。エネルギーに関しては、原子力技術の基盤を失ってはいけない。トリウム原発の登場もある。細川の殿に象徴されるあの虚弱さが日本のリベラルのひ弱さだ。単純な脱原発論者。日米原子力共同体。中核は日本の技術(日立・東芝・三菱)。こういうものをどう調整するのか。リアリティがない。ポピュリズムだ。専門家がいなければ発言はできない。菅首相原発率5割とした責任者。団塊世代は美しい言葉に酔う。どういうプロセスで?。責任。
    • 貧相なリベラルからゴージャスなリベラルへ。都市中間層が結束できるリベラルへ。
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講演会の始まる前に相田みつを記念館で開催中の「相田みつを坂村真民」展を観みてきた。
坂村真民(1909-2006年)は詩人。人間賛歌の詩が素晴らしい。