「谷崎潤一郎--絢爛たる物語世界」展(神奈川近代文学館)

神奈川近代文学館で「谷崎潤一郎--絢爛たる物語世界」展が開催中で、先日訪ねてきた。
大谷崎」と呼ばれるこの谷崎潤一郎[1886-1965年)は、多作の作品群で、愛と老いと性をテーマとした。この企画は没後50年を契機に企画されたものだ。

なかなかの好男子であった谷崎は、府立一中第一高等学校英法学科、東京帝大国文科というコースをたどるが、作家を志望し、授業料滞納で退学処分を受ける。
この退学となったこの年に25歳で、第二次「新思潮」に掲載した「誕生」が、「三田文学」誌上で永井荷風に「日本文学において前人未踏の芸術的境地を拓いた傑出した作家」だと激賞され作家としての前途が開けていく。

29歳で石川千代と結婚するが、35歳友人佐藤春夫81882-1964)への千代夫人譲渡問題がこじれ佐藤と絶交。
44歳、千代と離婚。45歳、古川丁未子と結婚。
千代夫人の妹せい子との関係をモデルとした「痴人の愛」は谷崎文学もの前期の集大成となった。

46歳、根津松子と恋愛関係になり離婚し、松子と結婚。
生涯で3度結婚しているが、松子こそ理想の女性であり、この後、谷崎は作風を変化させて、「細雪」に代表される傑作を書き続ける。「細雪」は軍部の圧力により「中央公論」に掲載中止となるが、谷崎は書き続ける。この間、中央公論の嶋中社長は原稿料を払い続けた。

60歳、「細雪」上巻。61歳、「細雪」中巻。62歳、「細雪」下巻。
毎日出版文化賞、朝日文化賞を受賞し、63歳、文化勲章を受章。
65歳、全26冊の「谷崎源氏」で文化功労者となった。

その後も旺盛な執筆が続き、74歳と78歳ではノーベル文学賞の最終候補になっている。
1965年、79歳で永眠。

30歳の時に書いた「神童」には谷崎自身のことと思われる記述がある。
「あんまり感性が鋭過ぎる。、、人間の美を歌ふために生まれて来たに男に違ひない。、、自分を凡人だと思ふ事は出来ぬ。、、天才を持って居るような気がする。己が自分の本当の使命を自覚して、人間の美を讃へ、宴楽を歌へば、己の天才は真実の光を発揮するのだ。」

谷崎は、自伝的作品、マゾヒズム小説、怪奇小説、芸術家小説、少年ものなどの作品や、戯曲、そして映画製作にも関わるなど、まさに怒涛の仕事量をこなした。

「私には崇拝する高貴の女性かなければ思ふやうに創作か出来ないのでございます」と松子に書き送ったように、谷崎は女性のもたらすインスピレーションをエンジンとして創作に励んだ。
この点は、20世紀最大の芸術家ピカソに通じるところがある。

最晩年の傑作は「瘋癲老人日記」で、これにより毎日芸術大賞を受賞している。

「人一倍遅筆な私が、日に四五枚の進行が精々である私が」と書いているのは意外に思えるが、もしそうなら膨大な作品群を残したということは、相当な時間を執筆にあてたのだろう。
大谷崎と呼ばれた谷崎潤一郎は、己の天才を信じ、それに殉じた人生であった。

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名言の暦 4月21日。

命日

  • アベラルズス1142:不断に疑問を抱くことこそ知恵に対する最初の鍵である。
  • マーク・トゥエイン1910
    • やったことは、たとえ失敗しても、20年後には笑い話にできる。しかし、やらなかったことは、20年後には後悔するだけだ。
    • 自分が元気になる一番の方法は、他の誰かを元気にすることだ。
    • 生まれてから死ぬまで、人間ってものは、醒めているかぎり、たえず何らかの教育を受けているわけだよ。そしてその教育の中でも一番は、いわゆる人間関係ってやつだな。
  • 藤田田2004:必ずメモをとれ。
  • 多田富雄2010:私には、女は「存在」だが、男は「現象」に過ぎないように思われる。

誕生日

  • 三船久蔵1883:小さいから大を倒せる。そこに日本武道としての柔道の意義がある。
  • 岡田嘉子1902:私は過去を後悔すること嫌いなんです。
  • 輪島功一1943:自分を追い込まずして、アイデアが出てくるわけないじゃないか。
  • マックス・ウェーバー1864:自己を滅しておのれの課題に専心する人こそ、その仕事の価値の増大とともにその名を高める結果を得る。
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  • 期日前投票。八王子市会議員選。

150421

  • 今泉学科長:人事、院、、。
  • 金教務委員長・小林入委員長:グローバル講演会・アクティブラーニング研究会
  • 杉本さん:大学戦略会議議事録
  • 森島入試課長:講演会の件
  • 水嶋教務課長:人事委員会議事録
  • 知識リーダーシップ綜合研究所の片岡さん来訪:講演の打ちあわせ
  • 梅澤先生:意見交換
  • 出原先生:フランス出張報告
  • 今泉先生