もう一つのドラッカー--日本美術の蒐集家

ドラッカーコレクション 珠玉の水墨画--マネジメントの父が愛した日本の美」展。

影響を受けたマネジメントの名著のように、日本絵画に関してドラッカーの慧眼が随所に言葉で表現されていて、知的興奮を覚える時間だった。以下、解説のメモから。

  • せわしない世界から抜け出し、山水画の中に深く入って、その中に生き、真実の永遠の世界、精神世界に入っていく。これが室町水墨画の特に山水画が自分に果たしてくれる役割なのだ。
  • 日本の山水画は、観る者を招き入れる。むしろ入ることを望んでいる。
  • 山水画の目的は、禅僧が入っていく場所、京都あるいは軍都鎌倉での忙しく追い立てられるせわしない世界から抜け出し、清明な精神の世界、創造と創世の世界ン入っていく場所を与えられることでした。
  • 中国絵画の手本とは異なり、中に入るため、その中で生きたり経験できるように描かれたのです。
  • 私は山水画の中に入って別の人間になります。真実の詠絵院の世界、精神世界に入っていくのです。
  • 西欧絵画は幾何学的な構図。中国絵画は代数的で均衡を重視。日本絵画はトポロジカル(位相幾何学的)。位相幾何学とは、角度、境界線、渦巻きを中心課題とする。何が空間を区別しているかではなく、「空間が何を区分しているのか」という問題を研究する学問である。
  • まず空間を見てから線を見て描き始める。日本の美学はトポロジカルであると私は考える。つまり、描こうとする対象をみるとき、各部分の構造をみるのではなく、全体的な携帯すなわち今日いう「デザイン」をみるのである。
  • 日本医術の特色。概念ではなく知覚。写実ではなくデザイン。気かではなくトポロジー。分析ではなく統合。
  • 日本は西洋にも中国にもない人物画の一分野がある。すなわち精神的自画像である。
  • 禅画。精神的な苦悩の問いを示す絵画である。禅画は知らせ、体験させようとする。
  • 仙崖の達磨図を見た時のショックを今も鮮やかに覚えている。禅画は江戸のカウンターカルチャー(反体制文化)だ。
  • 文人画は文人にとって、自分自身の本質すなわちその全人格的なものを表現する手段である。
  • 文人画と共にいればそれだけ自分自身について学ぶ。文人とは学者兼画家。
  • 日本の最も重要な特徴は「知覚力」である。


ドラッカーは1934年の6月の土曜日の午後、ロンドンで雨宿りに入った建物でたまたまやっていた日本美術展
をみた。そして1959年の50歳で初めて日本を訪問し、京都で日本画を2点購入する。そしてその後は毎年のように来日し、限られた古美術商相手に熱心な収集を行っていく。
この企画展ではコレクションの一部である膨大な日本画が並んでいた。

ドラッカーの名著の大半は60代以降の作品である。そういう意味ではドラッカーは遅咲きの人であったともいえる。
書斎には常に日本画が飾ってあった。
執筆に疲れた時、ドラッカーは日本の山水画の中に入り遊んだ。そして正気を取り戻したのである。

知らなかった、もう一つのドラッカーがいた。

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名言の暦 6月29日

命日

  • 立原道造1939:一度死んだ者は、二度生きねばならない
  • 川又克二1986:相手が信頼するに足れば、自らも信頼に値するものにならねばならぬとする努力。これが相互信頼の真髄である。

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生誕

  • サン・テグジュベリ1900
    • 心だけが、正しくものを見るkとができるのさ。本当に大切なものは目に見えないんだよ。
    • 愛するということは、我等が互いに見つめ合うことではなく、ともに同じ方向を見つめるということだ。
    • ぼくは自分にとって複雑すぎる。自分をどう使ったらいいおかわからない。
    • 計画のない目標は、ただの願い事にすぎない。
  • 柳宗理1915:いくらデザインがよくても、その良さをわかってくれるクライアントがいなくては作れない。
  • 左幸子1930:
  • 伊東絹子1932:
  • 野村克也1935:才能には限界がある。でも、頭脳に限界はない。