中野剛志「世界を戦争に導くグローバリズム」

中野剛志「世界を戦争に導くグローバリズム」(集英社新書)を読了。


アメリカが世界の警察官になれなくなった。日本を守れないなら日米同盟の深化には意味がない。中国の武力攻撃を抑止できない可能性は高まっている。

2030年までに世界は覇権国家の存在しない構造となる。
アメリカは西半球の地域覇権国家となり、中国は東アジアの地域覇権国家になる。
アメリカは中国との共存戦略と、日本との同盟戦略の板挟みになるが、この間には根本的な矛盾がある。アメリカは、細心の注意を払って尖閣を巡る紛争に巻き込まれなようにする。米中の覇権戦争を避けて中国とは共存、協調を図る戦略を選択している。

1648年に結ばれたウエストファリア条約以降、主権国家から世界は構成された。国家主権より上位の政治的権威は存在しない。そのために内政不干渉といった一定の規範やルールを作り出して各国は共有している。
しかし、冷戦が終わりアメリカは世界覇権国家となり、コソボイラクなどへの軍事介入をするなど国家主権の制約を超えるようになった。
しかし、オバマ政権はウェストファリアンシステムに回帰しようとしている。

もしロシアと中国の連携にイランが加わり、反米同盟が結成されれば、アメリカはユーラシアの支配権を完全に失う。
衰退する覇権国家には、同盟、共存、撤退という3つの選択肢があるが、アメリカは同盟と共存の双方を志向している。共存はもっとも難しい戦略だ。
尖閣は東アジアのリーダーの地位を巡る紛争だが、アメリカがやってくれることは、よくて経済制裁だ。中国が尖閣を獲る目的は、日米同盟の信頼性を低下させる点にある。

世界は地域覇権国家の並列といういう多極になる。
アメリカはモンロー主義に回帰し西半球の覇権国家になる。
EUはヨーロッパ大陸。ロシアはユーラシア大陸の北部。中国は東アジア。インドは南アジア。

東アジアや中東は文化の共有が乏しく、仮借のない覇権戦争が繰り広げられる可能性が高い。
日本は中国との覇権戦争に巻き込まれる可能性が高い。
日本の道は十分な自主防衛能力を持つか、従属的な地位に甘んじるかのいずれしかない。

以上が著者の分析と結論だった。

アメリカの主導したグローバリズムは、中国の経済大国化と軍事大国化を促し、結果的にアメリカ経済を弱体化させ、アメリカをグローバル覇権から後退させた。

日本はアメリカの共存戦略と付き合いながら時間を稼ぎ、その間に自主防衛能力を高めて中国と向き合っていくという戦略ということになる。

命日

  • 黒沢明1998
    • 私は一本の作ごとに、様々な一生を暮らして来た。映画の上で様々な人生を経験してきた
    • サラサラとしたお茶漬けでなくて、お客にたっぷりとしたご馳走を食べさせたい。ビフテキの上にバターを塗って、その上に蒲焼を載せるような、誰も食べたことのないようなご馳走をね。
    • 人を憎んでいる暇なんてない。わしには、そんな暇はない。
    • 一日に1枚しか書けなくても、一年かければ、365枚のシナリオが書ける。
    • 悪魔のように細心に、天使のように大胆に。
    • 泥沼にだって星は映るんだ。
  • 山口洋子2014:

生誕

  • 星新一1926:突飛な質問、恥、笑い、というのはアイデアへの感覚なのである。
  • 西村京太郎1930:人間、どこかで「なんとかなるサ」って開き直ることがないとね。
  • 岩城宏之1932:本当の伝統は昨日までのすべてを壊してもう一度作り上げて、たまたま3年前と同じになるというものでしょう。