小島勇編訳「武田家百目録--信玄の人生訓」(武田神社)

小島勇編訳「武田家百目録--信玄の人生訓」(武田神社)を読了。

武田信玄の軍師・山本勘助口演実記二審源自らが加筆して成立した心得集。
若い武士を対象とした日常生活の心得や守るべき常識を平易に記したものだ。

  • 朝の目覚めの方法「胸から臍の下まで3回なでおろし、臍下三寸の丹田をしっかりおさえてから起き上がれ」「寝床の上にあぐらを組み、その日の用事を心に描き、整理し、順序を立てて、寝床を出よ」「目の中はよく洗え」
  • 寝る前に「便所へ行って、その日一日の仕事の内容を書く印紙忘れていることは記録して枕元へ置き、翌日真っ先に区切りをつけよ」「晴れ晴れとした気持ちで丹田を押さえ気持ちを落ち着かせて寝る」「枕元に干し飯、金銭、梅干し、樫の棒、草鞋2足をそろえよ」
  • 「得意の仕事を申しつけよ」「身辺の出来事をむやみに語らず慎み深くせよ」「金を貸すときは助け与える気持ちで」「一歩一歩歩みを踏み固め、段々と稽古に励め」
  • 他には、旅の心得、家のおさめ方、など実に細かく作法や心構えや作法を説いている。

基本に流れる考え方は儒教の「修身斉家治国平天下」である。

戦国武士の心得と武田信玄の考え方がよくわかる。
現代で言えば、ビジネス書に近い。
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「名言との対話」。2月23日。トルストイ

  • 「最上の幸福は、一年の終わりにおいて、年頭における自己よりも、よりよくなったと感ずることである。」
    • 文豪トルストイは34歳で結婚し13人の子供を設けた。その妻とは80歳を過ぎて妻と不和になり家出をしている。健康には関心が高く、乗馬、テニスを好んだ。ピアノが上手であり、好きな作曲家はショパンだった。トルストイの日常生活を偲ぶことができる。2月23日は偉大なるトルストイの没した日。
    • 戦争と平和」「アンナ・カレーニナ」などの世界的名作を書く。私有財産を否定し、非戦論・非暴力を信条とした。この文豪にしてもスランプで精神が不安定な状態も長く続いた。
    • トルストイは近代日本のインテリに人気が高い。歴史家・徳富蘇峰。文豪・徳富蘆花。布施辰治弁護士。高校生詩人・山田かまち。陶芸家の加藤唐九郎武者小路実篤など白樺派の面々。岩波文化人を育てた岩波茂雄。文芸評論の小林秀雄。、、、、。私の知ってるだけでもこのような人たちが心酔している。
    • 冒頭の言葉のように、確かに年頭と年末の自分を比べて、偽りなく相当の進歩があったと満足できることは、幸福感を誘う。その幸福感が薄皮を重ねるように毎年積み重なって幸福の深さを味わうことができるのだ。「真の文明人は、人生における自己の使命を、知っている人間のことである」とトルストイが言うように、使命感に裏付けられた幸福は最上のものだろう。