フランス人の日本文化熱は最高潮ーー磯村尚徳さんのネオ・ジャポニズム論を聴く

NHKの看板だった磯村尚徳(NHK特別主幹)さんの話を聞く機会があった。

この10年、磯村さんはパリ日本文化会館の初代館長として1995年から2005年にかけてパリに滞在した。この会館は110億円かけた立派な施設で、縄文展草間弥生展、イサム・ノグチ展、ひととロボット展、伊万里展、広重展、YOKKAI妖怪展、そして来年度は棟方志功展、アジアのキュビズム展、明治の洋画展などが予定されている。パリには世界各国の文化会館が64あるが、中国などを抑えて入場者数はトップだそうだ。


その背景には、ネオ・ジャポニズムという波がある。マンガ・アニメ・ロボット・剣道・柔道・お花・お茶・折紙などにフランス人が大きな関心を抱いていることがある。いわゆるジャポニズムは宮廷やアーチストなどエリート層の感心だったが、今回は日本の大衆文化(すし屋は600軒。デーリーカルチャー)に対する関心の深まりが底流にある。庶民層に影響が及び、特に女性は「フランス人による日本祭」では65%が女性であるのも特徴。現在、フランスは一人当たりの日本文化への投資額は世界一である。


日仏関係の歴史をみると、渋沢栄一永井荷風などのフランス通の片想いの時代が続いたが、今では逆にフランスの日本への片想いに逆転している。日本では女性が一番好きな国はフランスだが、男性は14位でしかない。

日本とフランスは補完関係にある。フランスは、戦略や企画が得意だが、実行面ではうまくない。日本は逆である。日産のゴーンさんの成功は、構想や戦略を彼が立て、実行を日本人がやったというプロジェクトだから成功した。

20分程度の短いスピーチだったが、示唆とウイットに富んでいた。


磯村さんは昭和4年生まれだから70代後半の年齢だが、元気な姿を久しぶりにみた。