大学事務職員のための高等教育システム論(山本眞一)


8月に宮城大学で行うFD研修会で講師をお願いする山本眞一先生(広島大学大学研究センター長)の本を読んだ。この数年間に何回か、前任地大学の筑波大学大学研究センターに呼ばれたことがある。その折、いただいたのが「大学職員のための高等教育システム論--より良い大学経営専門職となるために」(文葉社)だ。大学に勤務する事務職員を対象とする本で、高等教育の基礎知識と事務職員の心構えを述べている。私のような他の分野からの転職組は基礎知識が役にたつし、事務職員の心構えの方は管理職として大学運営にあたる私のような者にもいい情報が書いてある。




1章:職場としての大学

2章:高等教育システムとは何か

3章:大学の歴史として知っておくべきこと

4章:変化する時代の中の大学教育

5章:職員のプロフィール

6章:すぐれた大学職員となるために


1章と4章と6章を興味を持って読んだ。


現在は広島大学の大学研究センター長をつとめる山本先生は、二つの研究会を前任の筑波大学大学研究センターで行っていた。

一つは2000年から始めた「大学経営人材養成のための短期集中公開研究会」で、大学職員の能力開発とくにそのための意欲を刺激する目的の研究会だった。受講者は延べ5000人を超え、修了証書も1000枚以上を発行している。

この研究会には確か二度ほど講師としてお招きいただき、講義とその後の受講者との懇親会にも参加した。主として私立大学の事務職員が中心だったが、大学の現状や事務職員の課題や悩みなどを聞いて随分と参考になった。


もう一つは、大学院レベルの授業を想定した「試行プログラム」でこれは平成14年度から実施している。大学経営に特化した大学院を想定した授業の試行プログラムで私も一度講義に出たことがある。このときは「考える大学職員になるために」というテーマで講義した記憶がある。


山本先生とはお互い30代の頃からの知り合いである。

知的生産の技術研究会のスタッフとして活動していた頃、東京駅のレストランで当時文部省の役人だった山本さんと会ったことがある。山本さんも知研の会員だった。


略歴をみると、山本さんは40歳のときに埼玉大学大学院政策科学研究科の助教授に転出し、43歳で筑波大学に移り、47歳のときに教授となっている。大学研究センター長となった山本さんからこの二つの講座に呼ばれて旧交が復活した形である。

この本の6章には「サラリーマンの知的生産技術」という言葉があり、「今や古典の部類に属すると思われる梅棹忠夫著「知的生産の技術」(岩波新書)」を薦めている。


山本先生は「問題解決能力の向上」をあげている。志と能力を有する大学職員に、幅広い大学問題の理解を前提に、問題怪傑能力を教える教員は、残念ながら現時点では明らかに不足していると語っている。

そして「職員」に望まれることして三つあげている。

1.大学として解決すべき課題が何かを正しく捉えられる能力。

2.教育の工夫改善を始めとする学生サービスの向上策を正しく捉えられる能力

3.常に新しい事務分野に興味を持ちつづけること。


事務職員と頻繁に接触し仕事をしている私にはよくわかる議論で、産業界や行政、教育分野などで私が講演している問題意識とほぼ同じである。大学界も経営や仕事という観点からみると他の業界とあまり違わないように思う。


8月の宮城大学の教員研修会(FD)で山本先生の名前が出たので、連絡役を買ってでて久しぶりに連絡をとった。研修会で当大学の大学教員に刺激を与えてもらうのが楽しみだ。