「家政婦は見た!」(テレビ朝日)---ライブドア事件を下敷きにした逸品のドラマを堪能

珍しく夕食後「家政婦は見た!」というテレビドラマをずっと見た。

年一回くらいの割合で放映されるこのドラマはその当時の世相がふんだんに盛り込まれているなどよくつくり込まれていて面白い。


演技の大変上手い女優市原悦子演じる石崎秋子が上流家庭に大沢家政婦協会の家政婦として派遣されて、その欺瞞ぶりを見聞し、最後に自分が見聞した事柄を家族全員が集まる席であらいざらいぶちまけて、去っていくというのが毎回のおおまかなストーリーである。

一種サスペンス的な要素もあり、時代を風刺する面白さもあり、ユーモアにもあふれていて、なかなか素晴らしい作品が多い。


最後のエンディングで大映テレビ制作とあったのを見つけた。このプロダクションの作品は定評がある。大ヒットとなった「スチュワーデス物語」はこの会社の作品である。あるドラマをつくるときに、企業側の担当者として、有名な野添さん(確か同名の女優のお姉さん)という女性プロデューサーと打ち合わせや食事をしたことがあることを思い出した。ドラマづくりにかける情熱と細かいところまでゆるがせにしない職人的な仕事ぶりに感心したことがある。私は当時30代だったからもう野添さんは引退しているのだろうが、こういうドラマづくりの伝統が引き継がれていることがわかって嬉しくなった。


この番組は1983年から始まったというから20年以上の長寿である。

今回はこのシリーズの第25作で、「家政婦は見た!美貌の女社長、8000億の秘密…秋子に似たソックリ女の謎!」というキャッチであるが、ライブドア事件を下敷きにしていることがすぐにわかる内容だった。

主役の女社長は堀江社長のキャラクター、浅野温子演じるファンドのトップは村上ファンドの社長のキャラクター、舞台となっている超高層ビル六本木ヒルズ、などあの事件を思い出しながら楽しめる内容だった。

相対取引投資事業組合の活用による株価の吊り上げなどの錬金術など、話題になったキーワードや仕組みがふんだんにでてくるなど、ライブドアをめぐる当時の社会の姿が戯画化されていて面白かった。

また般若の名人面打ち師も登場し芸術世界の深層を覗くこともできるし、一筋縄ではいかない男女の関係の深い闇の演出もあり、結局最後まで見てしまった。


家政婦は見た!」が代表作品の一つとなっている市原悦子もこの始めた当時は50歳くらだったろうから今は70歳になっているはずだが、円熟した演技が素晴らしい。


このドラマのエンディングは独特である。

主人公の秋子がブツブツいいながら次の家政婦の依頼のあった家にでかけ、呼び鈴を押して、家政婦紹介所からきましたというところで終わる。この間、ドラマのスタッフの文字などがずっと流れているが、このエンディングの時間も結構長い。今回は豪華な邸宅だったが、これが次回の作品の予告になっていて視聴者の想像を刺激するという凝ったつくりである。今から1年くらいかけてじっくりとつくりあげていくのだろう。息の長い仕事だから、毎回の作品の出来栄えもいいのだと思った。