浅野史郎--「地方が変われば、日本が変わる」(多摩大リレー講座)

k-hisatune2008-06-19

今週の多摩大学リレー講座は、前宮城県知事で現在は慶応義塾大学教授の浅野史郎氏。タクシーでいらした浅野さんを出迎えて驚かれる。宮城大学は県立大学だったこともあり、懸案事項の協議、入学式などの式典、大学での知事講義など浅野知事とは接触する機会が多かった。多摩大に移った理由、宮城大にも通っていること、住宅事情、家族のことなどを手短に報告。もらった名刺では、慶応義塾大学総合政策学部教授が正式な肩書となっていた。メールアドレスに加えて携帯番号まで記してあった。

浅野さんの講演スタイルは異例だった。
まず、14時40分からの講義なのに20分前には演壇に立ち、「前座」を始めた。会場にはまだ学生は入っていなくて、社会人の半分くらいが席についたところだったが、いきなり出てきて「40分から正式に講義を始める浅野です」と大きな声で第一声をあげ、会場を驚かせ沸かせる。自己紹介を含め20分間笑わせ、しゃべり続ける。
演壇の後ろに立って講義をするのが普通だが、浅野さんは違う。演題の前、つまり客席の近くに立ってしゃべる。興が乗ってくると上着を脱いでワイシャツ姿になる。身振り手振りを使って精力的に語りかける。新聞紙上をにぎわしている、そして相手がよく知っているトピックス、身近な話題を豊富に散りばめる。
こういうスタイルだが、もうひとつの特徴は言葉を操りながら、そして「駄じゃれ」を駆使しながら会場を常に沸かせることだ。肥満の話題では、貧乏暇無しにかけて「貧乏肥満なし」、節酒の話題では「酒と女は二合(二号)まで」、「出不精だったからデブだった」、男女共同参画の話題では「男女共同に三角も四角もない」、宮城県のこともある話題にかけて「土産(みやげ)県」と言ったり、DV(ドメスチックバイオレンス)の話題では「DV?、俺はまだ食ったことねえ、とある首長が言った」とか、とにかく早口でしゃべり続ける。こういう独特のスタイルは、自由になったせいか知事時代よりも奔放になっているという印象を受けた。終わった後、このシリーズの記念出版の説明を担当者がして「冗談などは省いて編集します」と言うと、「ダジャレや放送禁止用語を省くと、残すものがなくなってしまうんじゃないかな」と答え驚かしたり笑わせたり、いかにもサービス精神の旺盛な浅野さんらしい受けこたえだった。

さて、内容である。
・1993年からの知事時代12年間。この間、首相は、宮沢、細川、羽田、村山、小渕、橋本、森、小泉、と7人だった。
・日本に本物の民主主義を根付かせたい。これがライフワーク。
地方自治は民主主義の学校である。
・住民が変わり、地方が変わる。そうすれば国が変わる。
・しくみを変える
・地方議会にはみんなが無関心。「市長のチェック機関」ならそんなに人数はいらない。「知事と議会は車の両輪」というがそうだろうか。議員は住民と首長のパイプ役と言う人もいるが、そうなるとパイプの太さ、長さ、本数などが重要になり危険だ。そうではなくて地方議会は唯一の立法機関だ。
市議会議員には1000万円近い報酬があるし、なってみたらいい。団塊世代の地域デビューにいかが。
・中央集権が進んでおり、地方には自由度がない。
・「おまかせ民主主義」からの脱却が課題だ。
・格差と言わずに、「違い」と言おう。格差がいやなら国営自治体に。
三位一体改革。税源移譲、補助金廃止、交付税削減。ポイントは補助金で、20兆円ある補助金を3兆円分を廃止するという知事会議の案だったが、最終段階で政府は廃止でなく、削減とした。補助金はヒモ付きであり自由がきかない特定財源。中央官僚の統制が維持された。地方分権の失敗はこの点にある。
・廃止して本当に必要な施策なら住民や議員が黙っていないから、必ず地方議会で問題んなり、首長は復活せざるを得なくなる。地方が鍛えられる。
・民主主義とは、税金の取られ方、使い方について、民が主になるということだ。
・おまかせの反対は「怒り」
・「−−というもんだ、という人々」が問題だ
市議会議員に払っている報酬980万円(町田市)が高いかという議論ではなく、それだけの仕事をしているかという問題だ

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終了後は、例によって知研の八木会長と秋田事務局長と聖蹟桜ケ丘の駅ビルでお茶を飲みながら打ち合わせ。
本日の浅野さんの講義の概要は、八木さんの下記ブログ参照。
http://plaza.rakuten.co.jp/gendaiturezure/diary/200806200000/