中型JET旅客機国産プロジェクトと問題解決型ロボット産業

k-hisatune2008-11-06

多摩大学リレー講座の第7回は、監修者の寺島実郎さんの講義。昨日判明したアメリカ大統領選の結果分析から始まった興味深い内容だった。

ある案件があって、4日の朝に寺島さんから携帯に電話があって「今、首相官邸から羽田に向かい、韓国へいく」と言っていた。翌日5日に電話をかけたらすぐにコールバックがあって「今、ソウル。今夜の報道ステーションに出演する」とのことで、夜10時からの報道ステーションではアメルカ大統領選の分析をしている姿を目にした。本日6日の午後2時前に多摩大に到着。聞くと韓国では、イ・ミョンバク大統領とハーバード大学のフェルドシュタイン教授と3人でシンポジウムとティーでずっと一緒だったそうだ。韓国はウオン安でまいっていて大統領はグローバル人材の育成について熱心に語っていたそうだ。今回の講義の直前には新聞の対談があり明日7日の毎日新聞に大きな対談記事が出る。私の知っているだけでもこういうスケジュールだから情報の集積度は極めて高い。以下は本日の講義の要旨。

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  • アメリカ大統領選。勝利したオバマは黒人か?奴隷の子孫ではなくケニアからハワイに留学した父と白人女性との間の子供で、アッパーミドルクラスに属すから育ちは白人。父はケニアに戻り母はインドネシア人と再婚し、オバマは少年時代をジャカルタで過ごす。高校はハワイ、大学はコロンビア大、ハーバード大へ。多様性を身に着ける。アイデンティティへの不安があり、辛抱強く冷静な性格。
  • ケニアからマラソン留学してきた黒人が日本の首相になったということに近い、と想像せよ。
  • 「アメリカは天才とホームレスの国」と以前書いたことがあるが、天才には面白い国だが、普通の人・努力できない人には厳しい国だ。
  • 時代や歴史が呼んだのはオバマだ。1975年のベトナム戦争敗北(サイゴン陥落)直後の1976年には牧師的・宗教者的なやさしさと思いやりを持つ「癒し」のカーター大統領が登場。イラク戦争サブプライム問題で傷ついた現在のアメリカに、オバマが登場した。
  • 内陸のアメリカ(赤いアメリカ)は共和党のマケインが勝利し、海岸線のアメリカ(青いアメリカ)は民主党オバマが圧勝したが、総得票数はマケイン46%、オバマ52%であり大差ではなかった。今回の選挙は、ブッシュの8年との決別がテーマだった。世界への責任の回避の「内向きのアメルカ」を志向していたブッシュ政権は、半年後の2001年9月11日の事件によって、外向きにならざるを得なくなり、「歪んだ国際主義」のネオコン路線をとり、アフガン、イラクに入っていき、4800人のアメリカの若者の死と一兆ドルの戦費を費やし、サブプライムローンで瀕死の状態に陥った。新自由主義の総本山での政府の介入という敗北への失望と怒りによってマケインは沈没。この状況の打開のためにはオバマカードが有効であることになり、オバマの勝利となった。
  • 日本のメディアは、アメリカの日本通として定評のあるケント・カルダー、アーミテージ、パターソン、マイケル・グリーンなどに「オバマの登場によってアメリカは日本に厳しくなるか?」「保護主義が台頭するのではないか?」という質問をして、「安心して下さい。日本も十分に大事にされますよ」などと言われて安心する。不安の目線で、日米安保でメシを食っている人に聞くという構図。これは「愛されたい症候群」にかかっているということ。御託宣主義でいつも受身。
  • ブッシュと並走し、「解釈改憲」で自衛隊を海外に派遣するという不気味な国という印象を世界は持っている。
  • 日米関係の再構築のためには、現在の軍事片肺同盟(自由貿易協定もない)に、日米二国間の経済協力関係を深めるという方向もある。オバマの準備が整う前に具体的な経済同盟の提案をしてはどうか。
  • 防衛安保については、1990年以降日本の政治の混迷状況が続いたため的確な手を打てずに、いまだに敗戦時のままになっている。日本人は自分を大人だと思っている子供だ。戦後60年たっているのに、地位協定は改定されていない。外国の軍隊が永遠に存在している状況は、常識が欠如しているとしか思えない。国際社会では日本はアメリカの保護領、あるいはアメリカ周辺国とみられている。
  • 北方領土問題解決のチャンスである。ロシアは軍事作戦の強行によって資本引き揚げ、ルーブル価値の低下が起こり、孤立を深めつつあり、極東に秋波を送っている。日本に「ガバナンスがあれば絶好の機会だ。構想力と展開力が欠けている。
  • 脱「新自由主義政権」のオバマは、世界恐慌からの脱却という十字架を背負っている。フランクリンルーズベルトと同様。新「ニューディール政策」を出してくる。それは投機を抑えたり、新産業政策を出すなど政府が大きな役割を持つことになるだろう。
  • 今や、世界は額に汗する「実態のある産業」に回帰しつつある。
  • 中国には「ブランド企業はない。韓国にはヒュンダイ、サムソン、ラッキーなどの一定のブランドはあるが、その三社でGDPの半分を占めているなど危うい。日本はトヨタ・ホンダなどの自動車、パナソニック・そにーなどの電器、にみるように世界に冠たるブランド力を持っている。ブランドは技術力に支えられている。日本は産業資本主義の国なのだ。
  • 就業人口6420万人のうち2204万人というから三分の一は、年収が200万円以下である。年収200万とは自給1000円で死にもの狂いでは足りても届かない金額で、結婚できないレベル。世帯収入では連合は500万、自治労は700万。
  • 自動車産業場裾野が広いプラットフォーム型産業。新素材、ナノテク、ITなどの塊。しかし日本は自動車以降の産業が見えない。
  • 「中型JET旅客機の国産化プロジェクト」。アジアの大移動時代による需要の爆発が起こる。2010年の羽田空港国際化も。シナジーの大きなプラットフォーム型産業としてシンボリックなプロジェクトだ。中国などと組んだアジア共同のプロジェクトにするのもい。
  • 少子高齢化に立ち向かうために「問題解決型ロボット産業」もいい。自動車メーカのロボットへの進出、電器メーカーのマッサージ機など、将来の介護・福祉ロボットを視野に置いている。
  • 要するに、日本の持つ金をどこに回すかという議論になる。
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