ビッグサイトで加賀友禅作家・久恒俊治さんと再会

k-hisatune2008-11-21

品川での会議を終えて、新橋から「ゆりかもめ」でビッグサイトで行われている「IFFT(interiorlifestyle living) ライフスタイルを提案するインテリア総合見本市」を見に行く。
住空間を彩るインテリア・照明・テキストタイル・テーブルウエア・デザイン雑貨などを中心に最新のプロダクトが集結する、インテリア関連の総合見本市だ。インテリア関連の企業以外にも、会津若松商工会議所、秋田県漆器工業組合、かがわ産業支援財団、石川県デザインセンター、大川総合インテリア産業振興センター、徳島市地場産業振興協会、備後地域地場産業支援センターなど行政や産業界組織も出店している。中国、デンマーク、ドイツ、スイス、英国、台湾などからも出店もある。大きな見本市だ。

今回の目的は、11月14日の金沢で二日間ご一緒した加賀友禅作家の久恒俊治さんが出店しているのを激励するためだ。久恒という姓は大分県中津市にルーツがあり、互いにその流れということで会うことになった。同姓のよしみとでもいおうか。トシハルさんとケイイチさんと名前の方で呼び合うことになった。加賀友禅の絵柄を描いている人たちは「模様師」という職業名も持っている。

石川県は、輪島塗、山中漆器九谷焼加賀友禅、和紙などの伝統工芸を有しているが、今年度から新たな商品を開発する企画提案を行う「伝統産業商品提案力育成事業」をスタートしているが、その成果の一部をこの見本市で発表している。

  • (有)浅田漆器工芸(山中漆器加賀市)   座卓などインテリア用品と茶器
  • (株)大島東太郎商店(山中漆器加賀市)  香筒など轆轤(ろくろ)医術を生かした小物
  • 工房理平(山中漆器加賀市)        独創的な蒔絵によるペンダント型ルーペなど小物
  • 漆工芸大下香仙工房(山中漆器加賀市)   動物をモチーフとした蒔絵万年筆とフォトスタンド
  • 工房久恒(加賀友禅金沢市)        手描き友禅による木製パネルなどインテリア用品
  • 和紙工房まるとも(和紙・金沢市)      柿渋和紙等による壁紙、クッション、便せんなど
  • (株)錦山窯(九谷焼小松市)       九谷の伝統的な上絵技術を生かした「小ばこ」
  • 中津漆器店(輪島塗・輪島市)        呂色技術を生かした輪島塗
  • 吉田漆器工房(輪島塗・輪島市)       漆という素材の美しさ、輪島の塗の技術の高さ
  • 坂本漆器店(輪島塗・輪島市)        こども椀、百寿椀

商談会の日でもあり、トシハルさんは熱心な女性二人に対して丁寧な説明をしていて、やっと終わったのでご挨拶。数日間でいろいろと引き合いがあったそうだ。ロシア、野村工芸社、ディズニーなどの名前をあげていた。展開になると面白い。

日本人が着物を着ている姿を外国人は、「日本人は絵を着ている」と言ったそうだで、その見方に感心した。
「色には人生観が出る。目立つ色、くすんだ色など人生そのもの」というトシハルさんから金沢でいろいろと教えてもらったが、友禅はもともとは位の高い人しか着ることができなかったもので、貢物として扱われていた。庶民は友禅の古着しか手にできなかった。友禅の創始者は、宮崎友禅斎という人物だが、あまりこの人物には光があたっていないのではないかとの印象を受けた。
金沢市郊外の工房久恒で、弟子が絵を描いている様子や、加賀友禅の着物を見ながら講義を受けた。加賀友禅は、模様は作り手の自由で対象は花鳥風月。つゆ草のしぼり汁で柄を描くのだが、草津のつゆ草しか駄目だそうだ。もち米でつくった糊で柄の縁取りをする手法が加賀友禅の特徴である。「色を着る。模様はその次。色と模様があうのがいい着物なのです」。加賀友禅の世界は、染屋がメインで作家はその系列下にいるという構図になっている。

虫食いの模様、ぼかしの技術、塗り重ねないで一発で描き切る、などの技法を実際の加賀友禅の着物を見ながら説明を受けた。「いかに染めるか、そしていかに染めないかの技術」だそうだ。注文を受けて図案から考え始めるので時間はかかる。
トシハルさんは、金箔手描き加賀友禅、木の時計、竹のバッグなどの新しい素材に、模様を描くという新しい試みに挑戦しており、木でつくった屏風などもあった。伝統の上に立った新しい試みが行われている。

「花鳥風月の絵模様を描いた「加賀友禅」の着物は糸目という防染糊が命です。模様の輪郭が白い線になり色のにじみを止め、繊細な模様を描くことができます。この技法を「友禅」といいます。この友禅の技法を様々な素材に応用し、身近なインアテリアに施すことを、工房久恒では考えました。先人から受け継がれた伝統をもっと身近に感じて、親しんでいただければうれしく思います。」とパンフレットで簡潔に説明してあった。クリスタル友禅、友禅夢樹、金箔友禅、タイルなどさまざまな応用作品がある。http://www18.ocn.ne.jp/~yumeki/

トシハルさんを激励したあと、せっかくなので広い会場を回る。「木になる徳島」「瀬戸の家具」「京都」「箸」「都城の家具」など、「和」に関心が湧く。
京都の「洛中千職」(新工芸試作)では、和の素材・技術・感性をあらゆる産業や建築分野で活用しようという提案だった。
「研ぐ 編む 洗う 鋳る 彩る 打つ 置く 起こす 押す 祈る 織る 描く 掛ける 固める 鍛える 切る 括る 繰る 組む 提げる 挿す 絞る 摺る 刷る 染める 叩く 断つ 付ける 包む 紡ぐ 綴じる 煮る 縫う 塗る 練る 剥ぐ 挟む 嵌める 張る 貼る 引く 挽く 彫る 蒔く 曲げる 磨く 蒸す 揉む 焼く 湯のす 割る」という職人の使う日本の言葉を並べているパンフを見かけた。読めない言葉もいくつかありここに記せなかったが、やはり和の世界は素晴らしい。