「春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえてすずしかりけり」(道元

新宿の角川シネマで映画「禅 ZEN」を観る。 

正法眼蔵」を書いた曹洞宗の開祖、道元禅師の生涯を描いた作品。道元については、立松和平の本などを含めて話題になることが多いが、この映画で道元(1200−1253年)の生涯と教えの概要をつかみたいと思った。

750年前の乱世の鎌倉時代には、既成仏教の堕落があり、新しい仏教が多く生まれている法然(1133―1212年)、栄西(1141−1215年)、親鸞(1173-1202年)、叡尊(1201−1290年)、蘭渓道隆(1213-1278年)、日蓮(1222-1282年)、無学祖元(1226-1286年)、一遍(1239-1289年)と仏教界の革新期だった。

道元は世俗や戦乱から離れ、あるがまま自然の流れに身を任せひたすらに座る「只管打坐」(しかんだざ)を貫いていく。隆盛を妬む叡山から追われた道元は越前の永平寺で一派を形成していく。この作品では道元の偉さはよく描かれているが、その教えの中身についてはよく理解できなかった。またこの映画には映像や音楽などの道具立ては準備されていたが、観るものに感動を与えるシーンはあまり無かったように思う。

ただ、「春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえてすずしかりけり」という歌は心に響く。原作を書いた大谷哲夫(駒沢大大学総長)によれば、「道元の行き着いた世界は言葉では表すことのできない非言語の世界」だそうである。