「一点の素心」--「社会工学」講義(インターゼミ・寺島塾長)

k-hisatune2009-04-25

インターゼミ(社会工学研究会)、通称「寺島塾」の第3回目は、寺島塾長の「社会工学」に関する講義。

自身の早稲田大学での闘争経験、大学院時代の地域調査と猛勉強、そして三井物産入社。野田一夫、伊藤雅俊鈴木敏文、IJPC体験(イラン石油化学PJ)、イラン革命、イラン・イラク戦争、全面撤退と5千億円の損失、5人の中東専門家訪問、ユダヤ筋情報の重要性、大規模プロジェクトには基盤情報の整備が必要、イスラエル・テルアビブのシロア研究所、サバイバルファクターとしての情報、ホメイニに関する学際的・問題解決的アプローチ、ブルッキングス研究所中東班、三井物産ワシントン事務所長、、、、。と自身の20歳前後の学生時代から40代半ばまでの足跡をたどってそこから得られた教訓を、受講している学生と社会人大学院生に語る。

  • 社会工学とは問題解決・課題解決の方法論を高めること。
  • その原点は、人間力
  • 一点の素心
  • 人間関係マップ(支え、敬愛、兄弟、友人、本気で動いてくれる人、人間関係、、)とアセットマップ(資産、金、資格、能力、読書歴、エヴィデンス、)
  • それを毎年増やしていく。変化、進化。
  • 偶然
  • リスクとチャンスは背中合わせ
  • 人間山脈、人間連鎖
  • 縁を、努力して意味のあるものにしていく
  • 人生は思うにまかせない、シナリオどおりにはいかない
  • 大功は緩にあり、機会は急にあり。この機会を最大限に生かしていく。
  • 自分自身の国際化
  • 教養としての情報ではなく、直面する課題に対し、問題解決を目指してあたるかどうかがカギ
  • 知的武装
  • 人間力、たくましさ
  • コントリビュートしなければ見返りはない
  • 展開力、シナジー

九段サテライトの一室は、一言も聴き逃さないで吸収しようという空気に満ちた空間と化した。

私自身は、中央公論に「我ら団塊世代坂の上の雲」というすぐれた論文を書いた三井物産の社員として寺島実郎という名前を知っていたが、その数年後に寺島さんの37歳ころに知り合った記憶がある。その頃は寺島さんは中東問題に奔走しているときだったが、その後ニューヨーク、ワシントンと職場を変えていく過程で、日本航空の広報の仕事を始めた私は、社外勉強会の知研の取材対象として会い、その後、出張でニューヨーク、ワシントンに出かけた折に必ず訪ねていった。そういうことを思い出しながら聞いた。

講義の後には、次の予定までの30分ほどで、寺島塾長、長田先生、金先生と4人で、近くの中華料理店で食事。

「一点の素心」は、人生の教科書として日本人に特に人気のある「菜根譚」(明時代の洪自誠(こうじせい))という書物に出てくる。「友に交わるには、須らく三分の侠気を帯ぶべし。人と作(な)るには、一点の素心を存するを要す」。友人となるには利害を離れた義侠心が三分は必要で、ひとかどの人物になるには素直な心を持たねばならない。

「大功は緩にあり、機会は急にあり」という言葉は、愛知県田原市渡辺崋山記念館で見たことがある。大きな功績というものは平和な時代になすことができる。それを手にするチャンスというものは、突然に現われるものだ。田原藩の家老であった崋山が真木重郎兵衛定前という部下に大坂商人との外交交渉にあたって記した「八勿(ぶつ)」を送った。その中にある「太功は緩にあり機会は急にありといういことを忘るる勿れ」からきている。崋山は人間通だ。
http://d.hatena.ne.jp/k-hisatune/20051014#1129215600
一  面後の情に常を忘れるなかれ (平常心を失うな)
二  眼前の繰廻しに百年の計を忘れるなかれ (長期展望)
三  前面の功を期して後面の費を忘れるなかれ (利益とつけ)
四  大功は緩にあり 機会は急にありということを忘れるなかれ
五  面は冷なるを欲し 背は暖を欲すると云うを忘れるなかれ (心はあたたかくせよ)
六  挙動を慎み其恒をみらるるなかれ(立ち居振る舞いを慎み、本心を見透かされるな)
七  人を欺かんとするものは人に欺かる 不欺は即不欺己ということを忘れるなかれ (欺いてはならない)
八  基立て物従う基は心の実という事を忘れるなかれ(基本が立っていればあとはみなそれに従う。誠実に。)