「世界潮流の中での日本ー日米関係とアジアへの視座」(寺島実郎)

本日のリレー講座(寺島実郎)は、1995年12月29日にNHKで放映の「トライアングルクライシス」の懐かしいビデオ映像をみた。寺島さんが企画し出演しているこの貴重な映像を材料とした講義となった。

NHKアーカイブによると、このビデオは、「日本、アメリカ、中国。戦前戦後を通じて、この3国のパワーバランスに大きな影響を与えた男、ヘンリー・ルースの軌跡を寺島実郎が追う。ルースが創刊した「タイム」「ライフ」「フォーチュン」がいかに米国の世論、政治政策に大きな影響を与えていったかを現在の日米中にかさねあわせ分析する。」とある。
1995年当時、三井物産ワシントン事務所長だった寺島さんは47歳。若く精悍であはるが、語り口は今と同じでまったくよどみがない。

当時日本航空勤務の私は出張などでワシントンを訪れていたが、「二つのフォーチュン」の話は何度も聞いた記憶がある。

  • 知的三角測量
  • 日米関係は米中関係だ(松本重治)
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  • 1936年の「フォーチュン」日本特集号。200ページの大特集。日本株式会社の挑戦がテーマ。ルーズベルトのアメリカと蒋介石毛沢東の中国の間で力をつける日本へのいらだち。---中国山東省で1898年に生まれたヘンリー・ルース。キリスト教宣教師を父に持つ。対シナ21カ条の要求などで日本を憎んだルースは「中国を日本から救う」という使命を持つ。
  • タイム、フォーチュン、ライフというメディアを創刊したメディアの帝王
  • 1923年にタイムを創刊。偏見、挑戦、主観を押し出す。タイムで日本をたたく。
  • ルースは、親中国の巨頭、強いアメリカを主張、メディアという職業を持つ、という3つの存在感を持つ
  • 本格的なビジネス誌「フォーチュン」を創刊。ドラッカー、トフラー、ベル、ガルブレイスなどを育てる。
  • 1936年2月の「フォーチュン日本特集号」はアメリカ国民に大きな影響を与え、日本に対する反感をあおった
  • 写真誌「ライフ」を創刊し、対日感情悪化させた。宋子文を招く。
  • 1940年7月アメリカの対日禁輸、そして太平洋戦争へ。
  • ルースはルーズベルト大統領に全面協力。
  • 1944年の再び「フォーチュン日本特集」。ガルブレイス。軍人も読んだ。日本の生産力はアメリカの8分の1で日本敗北t分析。
  • 1945年8月、敗戦。
  • 日本は情報戦に敗れた。情報の質と量の重み。世界を廣造認識する力に欠けていた。世界史の大きな構造変化に気がつかなかった。
  • 蒋介石が破れ、毛沢東の中国が成立したが、ルースは受け入れない
  • 1950年の朝鮮戦争の勃発により反共の砦として日本をとらえなおした。ダレスからの手紙。
  • 「ライフ」で美しく、奥ゆかしい国として日本を描いた。
  • 日米同盟の必要性をテレビも含めキャンペーン。日本は生まれ変わった。同じ理想。平和と自由。
  • 1951年安日米安保条約の締結
  • 1967年にルース死亡
  • 歴史認識の大切さ。日米中トライアングル時代へ向かう。米中のはざまで日本は立ち位置を見失うのでないか。日米関係を大切にしながらどうアジアに入っていくか。中国を建設的な参画者として世界に招き入れるか。構想力と知恵が問われている。
  • 多角的・立体的にみる
  • 日米は二国間関係ではない。中国という要素が絡み合っている
  • 1949年に共産中国が成立し、中国は二つに割れた。これが日本の幸運だった。以後1972年のニクソン訪中までの23年間、アメリカは日本を援助し続けた。そうでなければアメリカの投資は中国にむかい日本の繁栄は30年遅れただろう。
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総括講義。

  • 14年前の映像をみて、「中国は戦略的パートナー」のクリントン時代、「中国は戦略的コンペティター」のブッシュ時代を経て、当時の問題意識修正の必要なないと感じた。
  • 太平洋戦争は中国をめぐる日米の対決だった
  • 中国にとって「門戸開放・機会均等」を唱えるアメリカは、欧州・日本への対抗勢力として歓迎すべき国だった。美国という言い方。
  • 1853年のペリー来航から1898年の米西戦争でアジアに出てくるまで45年あり、アメリカは遅れて出てきた
  • ルースは、宋美齢キャンペーン、フライイングタイガー(義勇兵)などを仕組んだ。rルースの思想がネオコンにつながっている。
  • 先日のシュミットやクレッソンなどが参加していたOBサミットの高度専門家会議にの参加したが、中国の存在が重くなっていると感じた。
  • 米中のG2論も
  • 北朝鮮テポドン問題に見るように日米連携ではものごとはかたづかない。東アジアの新しい秩序
  • 中華思想の中国と理念の共和国のアメリカという2つの大国のはざまで謙虚な日本はどう生きるか。アメリカとは大人の関係。中国とはしっかりとした関係。
  • 日米中の関係をできるだけ正三角形にしていくためには、緊張感が必要
  • 歴史の脈絡を立体的にとらえなければならない
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本日のスケジュール

9時:学長室ミーティング
11時半:大学戦略会議
14時50分:リレー講座
16時20分:ゼミ
18時:ゼミ