「日本への遺書」--「諸君!」最終号に登場する保守論客陣

文藝春秋社の雑誌「諸君!」が休刊となった。保守論壇の一角を占めていたこの雑誌も、「現代」や「論座」と同様に去っていった。昨年の平均発行部数は6万超というレベルに落ちていた。この雑誌の愛読者ではなかったが、最終号の6月号を読んでみた。

諸君 ! 2009年 06月号 [雑誌]

諸君 ! 2009年 06月号 [雑誌]

保守論壇の論客のオンパレードになっているが、寄稿を寄せた人たちの名前を並べてみる。

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石原慎太郎古森義久佐伯啓思・中嶋峰雄・西部遭・野田宣雄・秦郁彦・平河裕弘・渡部昇一
新保祐司・北康利・三浦小太郎・竹内洋粕谷一希・石井英夫・東真史・富岡幸一郎・酒井信・中西寛
中曽根康弘・池辺良・山本卓也・渡辺恒雄勝田吉太郎田中健五・岡崎久彦佐々淳行曽野綾子深田祐介屋山太郎金美齢佐瀬昌盛山崎正和平沼赳夫渡辺利夫立花隆黒田勝弘長谷川三千子山内昌之鹿島茂関川夏央阿川尚之東谷暁井上章一・荒木和博・石破茂坪内祐三福岡伸一佐藤優福田和也桜田
遠藤浩一・桜井よし子・田久保忠衛西尾幹二松本健一村田晃嗣八木秀次・宮崎哲也
荒川洋治今森光彦小堀桂一郎佐々木俊尚佐々淳行佐藤優・杉原志啓・高島俊男竹内洋出久根達郎中野翠・西木正明・樋口進・保坂正康

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この雑誌は、連載コラムが好評だった。「紳士と淑女」というコラムは30年にわたって続きファンが多かった。渡辺恒雄なども買うと真っ先にこのコラムを読んだと述懐している。最終号の「読者へ」には、その書き手の正体が初めて明かされている。
「なお、三十年にわたって、ご愛読いただいた「紳士と淑女」の筆者は、徳岡孝雄というものであった。」とある。

山本夏彦(1915-2002年)の連載コラムも人気があったらしい。石井英夫がそのことを書いているが、その中から風刺と諧謔の言葉を抜き出してみる。

  • 読者は作者の遺体が、冷たくなると同時に去るから、蚤に似ている。
  • この世は笑うよりほかない所だからである。怒ってはいけない。怒るのはたいてい正義漢で、この世に正義漢ほど始末におえないものはない。
  • 天才だと言った世間はすぐ忘れるが、言われた当人は忘れない
  • 汚職は国を滅ぼさないが、正義は国を滅ぼす。
  • 申しぶんのないことを言うひとたちはウロンですよ。
  • 実を言うと新聞の「天声人語」「余録」のたぐいは現代の修身なのである。
  • 美衣美食して助平のかぎりを尽すのは亡国の兆しである。ローマはそれで滅びた。
  • そして忘れる国民は忘れない国民にひしひしとかこまれているのである。
  • 私は断言する、新聞はこの次の一大事の時にも国をあやまるだろう。
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最後の「編集後記」には、「志を同じくする人々に支えられ、共に歩んできた四十年の歳月を誇りに思います」「長年の盟友にして、良きライバルだった雑誌「正論」にエールを送ります。一層のご健闘を。上島編集長、後はよろしく頼みました。」とある。

総合雑誌を舞台にした論壇については、いろいろと議論はあるが、「日本を元気にするオピニオン雑誌」と銘打ったこの雑誌の休刊で、世の中が面白くなくなったのは間違いない。