「ロシア「帝国」は復活するか?」---天江喜七郎(元・駐ウクライナ

k-hisatune2009-05-28

学長室ミーティング、山田事務局長との相談、多摩大ホームページの打ち合わせ、寺島学長へのブリーフィング、矢内事務長との相談、入試担当の井川さんと「私の志」コンテストの相談、諸橋学部長の代行でリレー講座の司会、ホームゼミ、、。

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さて、今日のリレー講座は、外務省参与で、元駐ウクライナ大使の天江喜七郎さんの「ロシア「帝国」の復活を考える」というテーマだった。事前に天江さんが寺島学長に挨拶に見えたときにご挨拶をする。プーチンという人物は大したものらしい。天江さんは現在は財団法人国立京都国際会館館長の仕事をして、同志社大学客員教授もつとめている。ソ連ウオッチャーとして、二度のソ連駐在でミグ事件を担当、ソ連崩壊と新ロシア誕生を目撃しており、2002年から2005年にかけて駐ウクライナ特命全権大使としてオレンジ革命を経験している。

  • 帝国の条件は中央に権力が集中し、軍事力とともにインテリジェンス能力が強いこと、そして文化宗教など周囲を引き付ける魅力を持っていることだ
  • 帝政ロシアソ連崩壊、新生ロシア、強いロシアの流れ
  • プーチンのロシアは、1991年から2000年にかけてロシアの失われた10年から立ち直った
  • プーチンレニングラード大で工学、経済学を学の国家秘密警察(KGB)に。レニングラードで局長、東ドイツ勤務。レニングラード市副市長。モスクワで連邦保安局長官。書紀を経て、首相。1999年12月31日に大統領代行、2000年3月大統領。2004年3月大統領再選。2008年5月首相。
  • 2012年から2026年まで、再度大統領職に就く可能性があり、26年間にわたって大統領と首相をつとめることになる。
  • プーチンとメドベジェフの二頭体制は、80-70%とロシア国民の圧倒的支持を得ており、経済の復活、給与水準の上昇による中流階級の増加など社会不安の挑候はない。
  • ロシアの特徴は、石油・天然ガスへの過度の依存、ヨーロッパとの相互依存の深まり、主要産業の国家管理である。
  • 金融危機は影響はあったが、1-2年は現在の歳出規模の維持は可能
  • 外交・安全保障では、CIS諸国との連携強化を推進している。
  • EUに入りたいウクライナオレンジ革命)やグルジアのNATO加盟には強く反対
  • 中央アジア上海協力機構
  • 中国との国境確定で関係は安定化したが、中国の脅威に備える必要

対日関係は時間がなくて駆け足だったので、レジメでフォローすると以下の通り。

  • ロシアにとり日本は第二次大戦の戦後処理(平和条約締結)が済んでいない唯一の国
  • 経済発展(特に極東・シベリア開発)に必要な資金、先端技術の調達先
  • 太平洋でロシアに対峙する日米安保体制の一翼を担う国
  • 「日露行動計画」に基づく協力関係が進展(サハリン2のLNG輸出開始、大手自動車メーカー対ロ投資)
  • 「極東・東シベリア・イニシアティブ」の提案=平和条約締結を含む全般的関係拡大を志向
  • 原子力協力が大きく進展する可能性

北方領土問題の見通し

日本の立場

  • 四島は対日講和条約(1951)で日本が放棄した「千島列島」」には含まれず
  • 1956年の日ソ共同宣言で両国の国交は回復。しかし平和条約が締結されなかったのは、領土問題が未解決であるため

ロシアの立場

  • 四島は「千島条約」に含まれる
  • 1956年の日ソ共同宣言で、日本に引き渡される領土は「歯舞」「色丹」のみで、「国後」、「択捉」の明示はない。

第三の解決法はあるか?

  • 四島の全面積を二等分する方法(中ロ方式)
  • 歯舞、色丹プラス国後の三島で妥協する方法
  • 四島全部を「共有地」とする方法
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ロシア「帝国」は復活しつつある。そして今から2026年にかけて日本にとっても北方領土問題解決の好機との印象を持ったが、そのためにはプーチン・メドベージェフ体制という盤石な安定政権との対峙のため、日本国内に強力な政権の樹立が必要条件となるだろう。