「時間主権」を確立せよ!

k-hisatune2010-04-26

         
「前業」という新語を用いて、「残業」を戒めた本を書いたのが、2007年の4月である。その後、この本の想定した読者である若いビジネスマンを巡る状況は、経済環境の悪化、経営環境の劣化とともに、可処分所得や可処分時間が減少を続けるなどなどますます厳しさを増している。今までより少ない人員で、今までより多くの仕事をこなすという矛盾した命題のもとで、厳しい労働を余儀なくされている若いビジネスマンのため息が聞こえてくるようだ。

 セルフマネジメントの要諦はタイムマネジメントに尽きるし、人間は習慣の束でもあるから、時間管理に関する細かなノウハウを積み上げることは大事なことではある。しかし、そういうノウハウ集には背骨(バックボーン)がないものが多い。もはやちまちました時間の使い方の集合体というだけでは、今の時代を乗り切れなくなっているように思う。

 ビジネスマンの頭の中には「仕事と家庭」というキーワードが居座っている。仕事は「公」で、家庭は「私」で、そのバランスをとろうという主張もあるが、果たしてそうだろうか。自分自身という領域を忘れてはいないか。仕事人でも家庭人でもない、個人としての人生はどうなっているのか。9時-5時は公人としての仕事とすると、朝の5時−9時は努力すれば個人の時間として使えるはずである。いやむしろ、早朝のこの時間しか私たちには残されていないとも言える。アフターファイブの時間はどうか。9時までは半公半個で使えるだろう。ビジネスマンには、仕事の前後に朝の5時-9時と夕方の5時-9時という沃野がぶら下がっているのだ。この黄金の時間で「個人」として何をすべきか、をよく考えねばならない。

 さて、戦場でもある仕事を考えよう。職場での仕事を遂行する上で、タイムマネジメントを阻害する主な要因は、上司と顧客の二つである。上司はこちらの仕事に関わりなく思いつきを課してくる。顧客はこちらの都合に無関係に作業を要求してくる。ビジネスマンは、これらの「帝国主義者」から搾取されている植民地状況にあるのだ。

 そこで、時間に関する主権の回復と確立が喫緊のテーマとなる。こういった背骨がなければ、私たちは常に侵略の危機にさらされる。主権とは自らの「領土」に国家意思を貫徹する力である。上司の方針、顧客の要求(領空侵犯)を常に先回りしてこちらから時間を指定して提案や打診をしていく。急な仕事を頼まれても、自分にとっての大事な時間をはずして応える。そうして主権国家としての防衛権を行使し最高の生産性を保持して仕事の量と質を上げていこう。

 早朝の5時-9時は「領海」と考えたい。領土の延長として眠れる資源を活用する権利がある。そうすると通勤は座れる始発駅がいい。自分の時間が持てるので通勤時間は長いほどいいから遠くに住むのが理想となる。

 夕刻からの5時-9時は、「排他的経済水域」と考えてみよう。この水域の航行は上司も顧客も航行は自由であるが、選択肢はこちらが握っている。残業、打合わせ、そして個人としての勉強にも充てられるゆるやかな時間である。そして当然のことだが、9時を過ぎれば2次会はやめて私人としての家庭に戻りたい。

 まず、「時間主権」の回復と確立、からすべてを始めよう。

         (4月25日発行の「生産性新聞」(日本生産性本部)に寄稿した原稿)
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午前は、秘書と打ち合わせ、書類整理。

午後。
13時。I出版社来訪。新しい企画を提案しておいた。
14時。読売新聞の方が来訪。総研所長として対応。
15時。S出版社来訪。山田学監、樋口先生と対応。