本日の多摩大リレー講座は、橘木俊詔先生。テーマは「格差社会」。講義を聴いて、熱い心を持った経済学者、という印象を抱いた。
日本は格差社会か?
- 10年前に書いた「日本の格差社会」(岩波新書)は、一億総中流社会から格差社会に変化しているという事実を証明したものだ。
- 小泉首相からは、「格差社会の何が悪いのか」という反応。内閣府からは貧富に差の大きい高齢者が増えているから当然で統計の取り方に問題ありという反応だった。
- 「格差社会でも仕方がないのか」「なぜ政府が反論したのか」を念頭に、4年前に「格差社会の行方」という本を上梓した。
- 「機会の格差」は、教育、仕事、昇進など。「結果の格差」は、所得など。
- OECD調査では、日本の貧困率は17.1%のアメリカンに次いで15,3%の2位。最近の統計では15.7%。真中の半分未満の所得者(相対的貧困)。この数字は生活補助後の数字。
- 地域で食べていけるか、という絶対的貧困は自分の調査では13-14%。
- 日本の貧困率は、14-15%。
なぜ格差の大きい国になったのか?
- 1.失われた10-15年。不景気。高い失業率。下落する賃金。
- 2.非正規労働者の増加(4割)。労働条件が悪い。
- 3. 社会保障分野の給付削減の継続
- 4.高齢単身世帯(親子の別居。家族の絆が薄くなった。)。母子家庭(離婚率の上昇。半分は貧困者)。一部の若者。つまり日本の家族のあり方の変化の結果だ。これは日本人自身が選択したものだ。
- 対策。同一労働同一賃金の推進。社会保険制度の充実(失業保険は1年以上から1月になった)。最低賃金制度の充実(毎年20-30円づつ上昇中。
- 最近「格差」をあまり聞かなくなった。これはメディアの影響。日本経済の回復がより大きな関心になった。内政に関心が向かなくなった。