「誰かのためなら人はがんばれる」(木山啓子)

「誰かのためなら人はがんばれる−−国際自立支援の現場で見つけた生き方」(木山啓子)・かんき出版)。12月20日発行。

誰かのためなら人はがんばれる 国際自立支援の現場でみつけた生き方

誰かのためなら人はがんばれる 国際自立支援の現場でみつけた生き方

世界各地で起きた紛争や自然災害などで、厳しい状況に置かれた人々の「自立」支援を行うNGOの運営責任者である木山啓子さんの16年に亘る活動から見えてきたものが、実感をもって優しい言葉で語れている。理想と現実、理念と現場とのギャップと相克を埋めようと日夜努力を重ねる新しいタイプの仕事に挑戦する女性の貴重な記録である。

JEN(ジャパン・エマジェンシー・NGOs)というNPOは、「自立支援」を旗印に19ヶ国で160万人以上の人たちの支援をしてきた。木山さんはボスニア・ヘルツエゴビナ、アフガニスタン、ハイチなどでJENの活動をしており、「幸せとは何か」「どのような支援をすべきか」「どのように自分は生きるべきか」を自問しながら奮闘を重ねている。

全体のお膳立てをする立場・JENの事務局長・理事である木山さんの問題意識は以下に示されており、共感を覚える。

  • 今の私の人生のミッションは、地球上にいるすべての等しく尊い人々が幸せになろうとする努力を支えること。
  • 自分の力で、すべての問題を解決するためには、自分の頭で考えなければならない。
  • プロジェクトはデザインが命、設計次第で相当に効果を高めることができます。
  • 得られた情報を全体像を捉えながら関連付けて考え、仮説を立てることも必要です。
  • この仕事の楽しいところのひとつは、現場にいる人たちが、日々改善を考え、実行しようとし、そのために協力する精神も行動も伴っているところかもしれません。
  • JENのような非営利の団体は、収益を上げることが目的ではありません。ですので、「この組織は何のために存在しているのか?」という「理念」がとても大切になります。
  • JENがJENらしい活動を各地で実施していくには、JENの遺伝子を伝える作業、もしくはJENの理念を共有する作業が必要になってきました。
  • 全体の風景、、全体像、、全体観、、俯瞰、、納得感、、、、、。
  • JEN「今日からできる国際協力5つのお願い」−「知って下さい」「行動してください」「続けてください」「忘れないでください」「伝えてください」

2010年の日本政府のODA予算は6187億円、そのうちNGO経由での支出は1.8%の110億円でしかない。アメリカは2兆4千億円うち6割の1兆4千億円がNGO経由である。こういった援助活動を実践しているNGOをそれぞれの立場で支援することが大切なことだと思う。「支援は、「支援を受ける側」だけでなく、「支援をする側」も幸せにしてくれます。」という言葉にも納得する。

「前に進もうとすると風を受けます。風を受けると進みにくいと感じるけれど、風に向かって進むからこそ工夫が生まれ、力がつくと思います。」と言い切る木山啓子さんの姿はすがすがしい。そういった「工夫」に自分のできることはないかと自問しながら読み終えた。

NGOの世界、国際援助協力の世界を知り、女性の生き方について考える材料を提供するだけでなく、読者に行動を促す力を持っている本である。