日本のエネルギー戦略・3つの提言--寺島実郎学長

2011年春学期のリレー講座の最終回は、寺島学長の講義。

アメリカ出張報告。

  • エネルギーパラダイムの転換。
    • 原子力推進でもなく、再生エネブームでもない。非在来型天然ガスのシュールガスに注目。カナダに大規模埋蔵。
    • アメリカは、中東で失敗し、中南米でも孤立化。ラテンアメリカカリブ共同体(LAC)35か国の成立、。除くアメリカの反米共同体。自立・自尊。
  • アジアの日本との関係。日米同盟。
    • アメリカは「トモダチ作戦」など優しい雰囲気。これは「抑圧的寛容」。有利な時には優しく不利な時には抑圧的になるアメリカ。
    • ウィキリークスによって公電などセカンドクラスの秘密情報6000通が開示され、日本という国の現実が見えてきた。
    • 外務省と防衛省の安保マフィアは、アメリカ側に立ってアドバイスをしていた。「民主党政権は続かない」「グアム移転経費を日本に負担させるやり方」、、。
    • 日本から日米関係の再構築に踏みだすチャンスだが、日本側の固定観念(日米同盟!)で進まない現実。日米同盟絶対という固定観念の恐ろしさ。
    • 戦後65年経っても外国軍隊の駐留という現実が日本の立ち位置に対する疑念となっている。
    • 日本の自立・自尊はいつ出てくるのか?

日本のエネルギー戦略。

  • 地震の死者は500人未満、津波は2.2万人。それに原発事故。
  • 復興需要により2011年のGDPは若干のプラス成長。
  • しかし中期的には産業衰退の恐れがある。円高、労働制約、電気料金、税金の上昇。
    • 円高(78円):欧州やアメリカよりはましという避難通貨に。
    • 労働制約:高齢化と過疎化。
  • 日本の中小企業を韓国・台湾が税金優遇などで、凄い勢いで呼び込んでいる。
  • TPP問題。アメリカは韓国とのFTAを最後に二国間FTAはやめ、多国間ならやるという方針転換。
  • 産業の空洞化、これをプラスに利用できないか? アジアダイナミズムとどう向き合っていくか。
  • 原発54基4885万基。稼働中は17基1500万KW。
  • 民主党の「2030年・電源の5割」という目標は消えた。2030年に20%程度か。
  • 電子力は副次的・過渡的エネルギーとなった。
  • 原子力は、「環境にやさしい」「コストが安い」という謳い文句だったが、この理屈は破たんした。
  • 五大国は核を持っている。アメリカは空母や潜水艦。技術基盤がある。
  • 日本は原子力の平和利用に徹してきた国。原子力制御のトップクラスの技術基盤を維持する必要がある。
  • 近隣の中国は一気に80基8000万KWへ。韓国は24基へ。台湾は6基へ。20年後には近隣では原子力が林立する状況になる。事故が起こる可能性がある。
  • 福島原発は旧式、他は進化した新式原発
  • この状況の中で、日本は踏ん張れるか?
    • 1.日本はIAEAから平和利用が許されている唯一の国。核は持てるけれども持たない。原子力の平和利用について発言する力と権利を持っておくべきだ。日本は省エネ、再生エネなど「技術」で国際貢献を果たすべきだ。
    • 2.火を使うことを覚えた猿という人間。原子力は人間の驕りの技術。神の世界であるパンドラの箱を開けた。エネルギー戦略は国家戦略そのものだ。いったん開けたからには責任を持って向き合うべきだ。原子力制御技術を発展させる若者を育てるべきだ。
    • 3.賠償スキームでは東電は賠償会社になる。入る人もいなくなる。モチベーションは上がらない。そういう会社に原発を任せられない。原子力発電部門は分離し、国策の統合会社にすべきだ。トップの人選、資本参加も含めて国際的に開かれた体制で。純民間企業が推進するアメリカ型ではなく、「行政が推進と規制を担当し、国営企業原子力発電・プラント建設・燃料サイクルの事業を担当するフランス型」をとるべきだ。
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本日:地域活性化マネジメントセンター会議。ホームページ関係スカイプ打ち合わせ。多摩大総研ミーティング。学長ブリーフィング。リレー講座。ホームゼミ。