BSで開高健の番組をやっていた。30年前に51歳の開高はアラスカのベーリング海峡のセント・ジョージア島でオヒョウという巨大魚(現地語ではハリバト)を釣る。そして毎日そのオヒョウのすべてを食べ尽くすため料理人を連れて行く。当時29歳の谷口博之だ。その谷口はその後の一緒の冒険行で開高のしゃべったことをすべてテープに記録することを思いつく。その初公開の開高肉声を交えながら番組が進行していく。
『27歳で作家になった。それ以来、書斎にこもって文章を書く生活を送ってきた。家族が寝静まった夜に机に向かう。まるでオケラかモグラのような生活だ。酒だけがなぐさめだ。頭から腐っていくような気がする。だから37歳から魚釣りに出かけるようになった。」
これが人気連載「オーパ!」の始まりだったのだ。世界の秘境での釣りを通じて自然と人間を語る連載は人々を魅了した。集英社文庫の扉には「何ごとであれ、ブラジルでは驚いたり、感嘆したりするとき、「オーパ!」という。」とある。「危機と遊び」を体験する中、驚きと感嘆にによって、生きているという実感を得ることができるのだろう。「それが人生だ」という開高の言葉が聞こえてくるような気がする。
- 作者: 開高健,高橋昇
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 1981/03/20
- メディア: 文庫
- 購入: 1人 クリック: 34回
- この商品を含むブログ (53件) を見る
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
- -
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
中津の同人誌「邪馬台」の代表をつとめていた宇都宮靖先生(昭和8年・1933年生まれ)の64歳の時の句集「周防灘」を帰省した時にもらった。名前は母からよく聞いていたが、お会いしたことはないが、教師であり、剣道の達人と聞いている。その句集を読んだ。風格と味わいがある句が多い。いくつか心に残った句をあげてみる。
厨より パン焼く匂ひ 武具飾る
火の国の手荒き迎へ日雷
帰省子の声の道場破りめく
初老とは風に色ある秋桜
古飯盒まだ捨て切れず敗戦日
師に会ひて冬の夜風のやはらかし
手詰まりを強気で鳴らす除夜の鐘
口下手な弔辞が泣かす柿若葉
夫婦とも頑固ではやる種物屋
行きずりに鱧鍋の店問はれけり
行年二十五戦士の兄の墓洗ふ
教へ子に喪中がひとり年賀状
わが戦史書かねば死ねず天の川
盆僧の軽口の度過ぎにけり
敵のあることも生甲斐冬構
寒釣りの男に鉄の匂ひせり
余生とは浅目に被る夏帽子
らっきょうに逃げられてゐる老いの箸
家系図にわが名書き足す松の内
教へ子も還暦といふ初稽古
二代目の決まりてはづむ寒稽古
生まれ来る者を待ちをり春の月
10歳から俳句を始め、十年に一冊づつ句集を出してきた宇都宮先生は、本人のあとがきによると11年間に1万6千句ほど作っている。それがこの句集では320句に絞られている。
計算すると一日平均4.4句になる。朝、昼、夕、夜とそれぞれ俳句を詠んできた日々だったということになる。
教師という職業を持った、剣道の達人と俳句の名人という立派な人生だ。
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
- -
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
秋学期が始まった。今日のゼミはどのように夏休みを過ごしたかを聞いてみた。