寺島実郎「脳力のレッスン―17世紀オランダ」の連載の図解に挑む

寺島実郎さんが雑誌「世界」に連載している「脳力のレッスン」は、時代と並走することがテーマなので毎回勉強になっています。ここ1年ほどは「17世紀オランダ」をテーマとした研究を発表しており、近代日本の目覚めの過程がよく理解できる力作です。この6回の中身の濃い連載の図解を寺島さんから頼まれたので挑戦してみました。その図解を見ながら6回の連載を要約した文章を以下に書いてみました。

鎖国をしていた江戸時代後期から明治時代にかけて、日本は東西からの開国の圧力にさらされていた。
16世紀前半にオスマン帝国の東方貿易の利権に対する反発から始まった、アジアへの新ルート開拓を目指した大航海時代が始まった。まず16世紀前半に隆盛を誇ったポルトガルは、ザビエルが鹿児島に到着し、西洋文明の曙を日本に知らせている。
その後16世紀後半にオスマンを破り黄金期を迎えたスペインから独立し、連邦共和国プロテスタント国のオランダが成立する。オランダは近代思想が芽生え、絵画芸術が栄え、科学技術が発達し、商業取引のルールが開発されて、17世紀に黄金時代を迎える。
オランダは1600年のリーフデ号の豊後表漂着以来、家康を始めとする徳川政権に接近し、それが長崎での日蘭貿易となって、江戸時代を通じて唯一の交易国となって日本に内部から影響を与えていく。
そのオランダの影響を受けたのがロシアである。ピョートル大帝から始まった極東開発は、ウラジオストック建設で本格的に力を得て、日本開国に向けて西からの圧力となって日本の北海道開拓を促進させた。
オランダは新興の英国との四次にわたる蘭英戦争をへて覇権を18世紀後半には大英帝国に渡すことになる。その大英帝国から逃れたピルグリムファーザーズはオランダで力を養った上で新大陸に渡り、アメリカを建国する。アメリカの独立にあたってオランダは軍需品供給や資金援助などで大いに協力する。
このアメリカが南北戦争を経て国内を再編し、東からの圧力となって日本に開国を迫るのである。
17世紀オランダの黄金時代は短いが、外壁を巡らした鎖国・日本の内部から近代西洋の影響を浸透させ、そして外部からの開国の大きな圧力を形成し、日本の扉をこじ開けてくる。日本の近現代史においてオランダが投げかけたものは大きい。」


「脳力のレッスン」6回の連載の記事の量は多く、質が高いのですが、以下のように図解にしていきました。

全文を黄色のマーカーで印をつけながら読み、キーワードをつかみ出しマルで囲み、そのキーワードを抜き出して、A4のペーパーに書きつけていく。
ある程度の段階で、この6回の全体像を考えながら、図の構成を考えていきます。日本を中心下に置き、外圧としての西欧・米国をまわりに配置し、その覇権の移り変わりを弧を描くように矢印でつないでみる。契機となった戦争、年号などを書き入れる。
西からの圧力と、東からの圧力を強い矢印で描いてみる。
日本は、長崎、鹿児島、北海道がポイントなるので外延に配置し、国内は江戸時代から明治時代への時間軸の変化を描く。
これで骨格が完成。

この後に続く連載は、大英帝国の動向、そしてオランダのDNAが深く刻み込まれたアメリカの動きを中心に続くだろうと予測ができます。ペリーの浦賀来航あたりから日本の近現代史の夜明けが詳しく紹介されていくことでしょう。

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箱根路で 己に克てり 柏武者