多摩の個人美術館--村内美術館(八王子)と西山美術館(町田)

多摩を車で走っていると、意外なところで個人美術館に出逢う。

「家具は村内、八王子」と親しまれている企業を一代で隆盛させた村内道昌氏がつくった大型家具店の一角にある美術館もそのうちの一つだ。
「日本一のバルビゾン派の美術館」というが、確かにミレー(1814-1875年)、コロー、クールベの3人の巨匠を始めとした秀作(ミレーの「落穂拾い」、「種をまく人」。コローの「夜明け」、、)が並んでいるのは壮観だ。
この立派な美術館の開館は1982年というから、今年でちょうど30年になる。
館長の村内道昌さんは1930年生まれなので今年82歳で、まだ現役の経営者でもある。
1964年にスイスの世界一の家具専門店フィスターを見て、34歳で「日本のフィスターになる!」という志を立てる。それから5年後に村内ホームセンターをオープンし、「ティーカップからロールスロイスまで」のテーマパークのような店を目指して今日を築いている。
41歳、三多摩初の本格画廊「ギャラリーむらうち」を開設。50歳頃にパリのモロー美術館を見て感銘を受けて、52歳で待望の美術館を開館する。65歳、美術館新館が開館。バルビゾン派の絵画は、ベートーベンの交響曲第6番「田園」が似合うと村内さんが述べているとおり、この名曲が静かに館内を流れている。

白洲次郎と正子の住んでいた町田の武相荘からの帰り道で、道を間違えて走っていたら、ある個人美術館が目に入った。江戸中期の武家風、商家屋敷の自宅の隣接している美術館である。これがとんでもないしろものだった。
この地で創業したナックという会社を成功させた西山由之という経営者が6年前に建てた大規模で豪華な美術館は、全体の敷地は4千坪もある。
ロダンユトリロ専門館で、驚いたことに、ロダンの彫刻52点、ユトリロの絵画76点が展示されているという豪華な美術館だった。
ロダン(1840-1917年)の作品は、鼻のつぶれた男、考える人、青銅時代、バルザック、バスティン・ルパージュ、永遠の青春、、、、。
初めて知ったのだが、ロダンは77歳でローズ・ブーレと結婚式を挙げるが、その15日後に73歳の妻は死去し、本人もその年に77歳で死去する。日本人芸術家に多大な影響を与えたロダンについてはもっと勉強の必要がある。
ユトリロ(1883-1955年)の作品は、パリのサン・ミッシェル橋、モンマルトルのラパン・アジる、テルトル広場、郊外の雪道など、、。 
ユトリロは、モンマルトルを中心に、パリの詩情あふれる風景を描き続けたが、家庭には恵まれず、少年時代はアルコール中毒で、その治療のために絵を描き始めて、画家として成功していく。
この美術館の喫茶では、40万円のマイセンのカップで紅茶などを楽しめるのもいい。 
西山由之氏は1942年生まれだから、現在は70歳。26歳でダスキン加盟店になり、42歳で2500店中でダスキン事業売上日本一を達成し以来継続中。53歳でジャスダックに株式上場、55歳で東証二部上場、57歳で東証一部昇格という立志伝的な経歴である。

成功した経営者が、その富を用いて名画や名彫刻を時間をかけて収集し、特色のある個人美術館を残す。そしてその美術館を永きにわたって多くの人が訪れて一流の芸術を堪能する。こういう生き方も最高のモデルの一つであると思う。

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今日は一番の大雪。
大学で、明日の教職員合同のティーチイン準備、そして4日の後援会主催のイベントの準備などにいそしむ。