中津の異人・野依秀市の破天荒人生

中津出身の野依秀市(1885--1968年)の全貌を描いた「天下無敵のメディア人間」(佐藤卓巳)を読み終わった。サブタイトルが、喧嘩ジャーナリスト野依秀市とあるようにあらゆる権威を敵にまわして大立ち回りを演じ続けた桁外れの人物が野依だ。

昨日会った松井さんは野依について聞くと口を濁したし、亡き横松先生の奥様は「面白い人でした。中津の半分は好きで半分は嫌い、そういう人でした」と語ってくれた。耶馬溪道路に大きな碑が建っているというと、「それは本人が建てたんでしょう」と笑いながら答えてくれた。その碑に岸信介が顕彰の言葉を書いていると言うと、そういう関係だっただろうということだった。横松夫人は、偉人ではなく、「異人」という言葉も使った。

この名前は中学時代か高校時代に聞いたことがかすかな記憶がある。線路際に本屋があって、店主らしき人に、中津の偉人のことを聞いたら野依の名前が出てきた。当時はまだ健在だったはずだ。

野依は中津近郊出身の大横綱双葉山の結婚の媒酌人であり、衆議院議員に大分から二度当選している。渋沢栄一三宅雪嶺に可愛がられた野依は経済雑誌「実業の世界」や新聞「帝日」を主宰したジャーナリストだったが、この人ほど毀誉褒貶のある人も珍しい。

天下無敵のメディア人間―喧嘩ジャーナリスト・野依秀市 (新潮選書)

天下無敵のメディア人間―喧嘩ジャーナリスト・野依秀市 (新潮選書)

野依の人物評が面白いのでいくつかあげてみる。
露伴、雪嶺に愛された騒動男。反権力を売り物にした異色の出版人。反骨の国権的自由主義者。ジャーナリズム最後の段階としての野依イズム。正直者。野依学校。偽悪者。織田信長の再来。名物男。疑問の人物。言論ギャング。、、。。

この項、
続く。