佐高信「孤高を恐れず--石橋湛山の志」-小欲に囚われるな

佐高信「孤高を恐れず--石橋湛山の志」(講談社文庫)を読了。
孤高を恐れず―石橋湛山の志 (講談社文庫)

石橋湛山(1884-1973年)という政治家は、総理大臣の椅子を病気によって71日という短い期間で潔く退くという見事な出処進退と、日本の進むべき道として「小日本主義」を唱えたことで知られている。

世界で活躍するためには大日本主義を棄てねばならない。「満州・台湾・朝鮮・樺太等も必要ではないという態度で出づるならば、戦争は絶対に起らない。従って我が国が他国から侵さるるということも決してない」。そして中国、東洋の弱小国全体を道徳的支持者とすることが日本にとっての大きな利益となると説いている。それが「小日本主義」である。

そして湛山の弟子・宇都宮徳馬に師事した田中秀征は、この考え方を「質日本主義」と言い、筆者の佐高信は、「良日本主義」と呼んでいる。

この書は、細川連立政権の誕生と崩壊の直後の情勢の中で、「リベラルとな何か」という問題意識を持って、その体現者たる石橋湛山を追った書物だ。「冴え冴えとした筆致」と国弘正雄評しているのをうなづくことができる。

組織、国歌、イデオロギーから自由であり、人間第一、個人第一の思想がリベラリズムである。

湛山は72歳で総理になり、亡くなる前年に「石橋湛山全集」15巻を完結させ、88歳で大往生した。

  • 我が国の総ての禍根は、、小欲に囚われていることだ。、、
  • 無武装の平和日本を実現すると共に、引いては其の功徳を世界に及ぼすの大悲願を立てるを要する。、それにはこの際国民に永く怨みを残すが如き記念物はたとい如何に大切なものといえども、これを一掃し去ることが必要であろう。
  • 「理論は大貨幣にして実行は小貨幣であり、小貨幣にくずせない理論はニセ札にすぎぬ」(田中王堂)
  • 勢力を集中するまでには十分意見を戦わして間違いのない方針を定めねばならぬ。
  • 日本には、主義として一つも小日本主義を標榜する政党がない。この点に於いて日本は実に挙国一致である。
  • 元号廃止、西紀使用を主張したい。、、我が国民はどれ程の不便を嘗めているか。、、煩わしさは馬鹿馬鹿しき限りだ。
  • 「吉田総裁という偉大にしてならびなき大総裁の後を襲うことを思うとき、慄然として身の引き締まるを覚えざるを得ない」(緒方竹虎自由党総裁)
  • 国民諸君、私は諸君を楽にすることはできない。もう一汗かいてもらわねばならない。湛山の政治に安楽を期待してもらっては困る。
  • 君、何ごとも運命だよ

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