関満博先生の「東日本大震災以後の日本の地域産業」講義

今日は大学内でいろいろ。

以下、昨日の講義の豊田先生のまとめ。

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久恒啓一:図解思考を用いた問題解決の軌跡

 オムニバスによる問題解決学総論のBクラスの第11回目として、久恒教授がご登壇。「図解思考を用いた問題解決の軌跡」というテーマをもとに、問題解決についてのお話。久恒先生がどう図解という武器にたどり着いたのか、そしてその武器でどんな問題をどう解決してきたのかという自身の経験で語られていきます。以下、講義のポイントをご紹介します。

<図解への道:いかに「図解」という武器を見つけたか>
 久恒先生の大学時代は、全共闘時代という時代で大学の授業がない時期があった。その分、いろいろと議論する時間をもったという。あるとき友人から「久恒、それはおまえの意見か?」と問われ、自分の意見が人の受け売りであったことに気がついた。そのときから失語症になり、話ができなくなった。その悩みから「自分は行動をしてこなかったのだ」と気がつく。そこでクラブを探検部に変更。ともかく1年間「行動」することに没頭した。探検部が「行動できない自分」という問題を解決した。
 その後、JALに就職。すると、今度は「仕事ができない自分がいる」という問題に気がつく。そこで路傍の石としての人生を覚悟する。でも、そうだとしたら、二つのことをすべきだとかんがえた。一つは、地に足を付け目の前の仕事をしっかりやろう。つまり足下をしっかり固めるということ。もう一つは、社内の仕事だけはダメだとも思い、外に出ることも決意する。社外の勉強会に「知的生産技術の勉強会」というものがあり、それに参加することとした。
 こういう意識で社内の様々な仕事をしていると、あることに気がつく。当時、社内では、様々な文章が飛び交っていたが、いちいちそれを添削する文化があった。いちいちそんな細かいことばかりしている風潮に嫌気がさし、これを破壊する方法を考え始めた。それが「図解」だ。
 いざ、今まで自分が言おうとしていたものを文章ではなく、図解をつかって資料をつくってみると、今までの細かな指摘が消えたことに気がつく。それだけではない。図解を元にすると会議や打ち合わせがはかどるだけでなく、参加者の生産性が上がっていることにも気がつく。これは武器になる。
 その後、本社に戻され、この「図解」という武器を元に、JALの様々な問題を解決していく。図解という強力な武器がそれらの問題を解決していった(※ここでいろいろな問題事例と図解例とが説明された)。
これが図解という武器を身につけた経緯だとのこと。現場で見つけ鍛えられた『図解』という武器が強力な武器であることがよくわかる。

<図解の成果:図解と共に問題と戦う>
 図解についての書籍を出版したことがきっかけで、野田一夫先生に出会う。ビジネスの現場から、野田一夫先生がつくった宮城大学の教授に転身。そこでも、様々な問題があることがわかる。たとえば、大学改革、地域活性化などなど。ただし、図解という技術があったためこれらの問題もつぎつぎと解決出来た。ポイントは、個々の問題の専門家はいるがそれを全体像としてまとめたり、全体としてマネジメント出来たりする人は希有だと言うことだ。
 ある経験を紹介する。自分の専門ではない委員のメンバーに選ばれたときがあった。その分野の専門家はたくさんいるし、自分は門外漢だ。でも「委員長ならできると思う」と返答。今までの問題解決への経験や図解といった武器を持っているから、専門家達の個々の知識のマネジメントと知の創造ができるという自信があるからだ。そして、委員長として実際に問題を解決できた。
 こういった経験はいくらでもある。それも、いろいろな問題解決に図解と共に取り組んできた成果である。

<説得から納得へ>
 問題の場では、相手を「説得」するという方法が採られることが多い。ただし、それが機能することばかりではない。説得というのは、自分の意見を相手に通すことだ。通される側には幾ばくかの違和感が残る。むしろ重要なのは、相手が「納得」してこちらの主張を受け入れることだ。
 そのためには、相手にとってわかりやすく伝え、それを説明なしにでも、「なるほど」と理解できなければならない。そのためには、図解というのは非常に有効なのだ。

<図解は実はロジカルだ>
 図解の例で一つマニュフェストの例を紹介したい。一枚にマニフェストをまとめるとよくわかる。文章で書かれたマニュフェストを学生に読んでもらう。よくわからない。これを学生が図解する作業をしてみると、理解が深まるだけではなく、矛盾が見えてきたりするのだ。
 これは、図解の面白い副次的効果だ。文章よりもむしろ図解の方が「ごまかしがきかない」と言うことだ。よく文章の方が論理的のように思われるが、図解の方がごまかしがきかないのだ。

<事例:多摩大学の戦略と図解>
 宮城大学を経て多摩大学へ。そこでも問題解決と図解が活きたとのこと。それまでの多摩大学の様々な資料を読みあさり、図にしてみると問題が明確になったという経緯が紹介された。たとえば、HPや目指すべき戦略などの話だ。とくに、多摩大学の学びについて図解で伝える。図解の意義を紹介すると共に、多摩大学のカリキュラムと各自が今何を学んでいるかを理解するきっかけとなっていく。

<自分の人生を図解しよう>
 後期の授業で学ぶ内容について紹介。自分の人生を図解することで、自分をプロジェクトとして理解し、何をすべきかを考える地図をつくるという話。この図を人生鳥瞰図と呼ぶ。これからの自分を考えるには、これまでの自分を理解することが大切だ。そのとき、自分史を文章で書き始めると上手くいかないことがある。ここでも図解という方法で自分史をまとめていけば、見えていくことが多いとのこと。就職を前にして、自分を図解で見つめ直すことができれば、解くべき問題も見つかるだろう。こういう視点が「仕事」を考えなければならない。
 そして、この人生鳥瞰図は、就活前にのみすれば良いというものではない。キャリアは仕事歴、経験歴、学習歴の組み合わせだ。そして、仕事には、キャリアだけではなく、家族や暮らしが関連する。こういういろいろな要素を組み合わせて自分を見つめられるのが図解による人生鳥瞰図だ。これで転職をしたり、人生の転機を見つけたりする人もいる。ぜひ、人生鳥瞰図をつかってみてほしい。

<まとめ>
 今回は、「図解」そのものの話ではなく、久恒先生自身の人生経験と問題解決、そしてその問題解決にどれだけ図解が役立ったかについて語られた。そして、久恒先生の人生は、一貫して「探検」と「知的生産」であったとのこと。ただし、これは今から振り返ると一貫して見えるということ。当時の自分がそうであったとおり、目の前の問題に真剣に取り組むことがまずは大切だというアドバイスで締めくくられた。
 今回の講義は、すでに他の久恒先生の講義で図解を学んでいる学生にとっては、「なるほどそういうことか」という納得があり、またまだ学んだことがない学生にとっては「ぜひ勉強したい」というワクワク感が起きたに違いない。
 ここまで聞いて、久恒先生の話に引き込まれている自分に気がつく。これは、図解そのものではなく、図解という「全体像の把握と細部のロジカルな理解という相反することを同時に解決する手法」が、話のストーリーを美しくかつわかりやすくしているからなのだろう。ともかく、話に「納得」した60分でした。

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