「2014年への視座」-寺島文庫リレー塾

午後は企業で講演研修。

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夜は日本工業倶楽部で寺島文庫リレー塾の最終回に出席。
寺島実郎「2014年への視座」。

  • 日本のメディアに接しているだけではブラインドがある。日米中が揺れているこの時期に英国キャメロン首相が訪中し「チベットは中国のもの。中国の核心的利益については西側先進国の中でもっとも中国を支持者に」と発言。英国は20年ぶりに巨大核発電所を建設し2023年に完成させる。それはフランス・中国連合が受注。原子力によって得られた電気の固定買取制度を導入。低酸素発電だから。こういうことは日本では報道されていない。
  • 「World in 2014」(ロンドンエコノミスト)がネットで見れるようになった。
  • 世界は無極化。全員参加型秩序。G7-G20-G0。ネットワーク型発展に向かう世界。相互依存の深まり。
  • 「World in 2013」では重要ファクターは米中関係と指摘。その通りになった。バイデン副大統領の防空識別圏問題発言は日米の温度差をあぶりだした変化球だった。民間航空機へのフライトスケジュール提出指示。米中関係は問題を抱えながらもトリウム原発シェールガスなどコミュニケーションを深めつつある。日米で連携して中国に向き合うという時代認識では間違う。
  • NSC国家安全保障会議)発足と特定秘密保護法はパッケージ。日本は戦争のできる国へ向かおうとしている。NSCは1947年にトルーマン大統領が戦争をしないためにつくった組織。第二次大戦後、軍(業軍人)の増長を制御するためのもの。アメリカは特定秘密に対しては民主的な制御の仕組みとして国立公文書館がチェックする仕組みを運用している。第三者機関についての議論がこの法律の本質をあぶり出すだろう。
  • ロシアという存在。日露関係は好転している。シェール革命によって欧州へのLNG/石油輸出は苦境。安定的需要のある日本に売りたい。「アジアのロシア」「ユーラシア国家・ロシア」。日本はすでに1割はロシアから、2020年には2割になる。30兆円の極東ロシア発展プログラムで化学・インフラ事業。北海道での日露のジョイント事業も始まった。ロシアが動き始めたことでいよいよ環日本海構想が輪になって実体化してきた。
  • 2050年に向けた日本のグランドデザイン戦略の議論。地球温暖化北極海航路が活況。2011年は荒唐無稽、2012年60隻、2013年500隻とリアリティを持ってきた。2020年には欧州・アジアで3000万トンの物流になる。スエズ南アフリカパナマに比べ三分の一圧縮される。地球は丸い。特に北東アジアにはインパクトが大きい。ロシア、カナダに続いて、中国が権益を主張し始めた。パナマ運河の拡張が2015年に終わる。6,7万トンクラスだったのが、10万トン以上の船が航行可能になる。北極海パナマ運河がポイント。
  • 2011年に11.9%で底を打った日米の貿易だが、2012年12.8%、2013年1-9月13.1%と持ち直してきた。アメリカの実体経済が良くなってきている。エネルギー(シェール革命)とIT(ビッグデータ)。中国は2011年に20.6%まで上昇したが反日デモ尖閣問題で下降しているがそれでも2012年19.7%、2013年1-9月19.6%、9月21.3%と20%あたりに張り付いている。大中華圏では30%。
  • アベノミクスへの視座。今の年末の状況は、株の上昇によるマネーゲーム礼賛と中韓に舐められたくないというプチ・ナショナリズムに酔っている。内実は11月27日までで外人(ヘッジファンド)は14.9兆円の買い越し。日本人法人は6.2兆円の売り越し、個人は7.8兆円の売り越しで計14.0兆円。もし日本人が持ったままでいれば日経平均は2万3千円まで上昇しただろう。日本人は日本の未来を信じていない。その結果、東証の外人の保有率は3割を超えた。彼らは配当性向にうるさいので労働分配率は低下して恐れがある。売り抜く資本主義であち臨界点に近づいている。外人がまだ売り抜いていないのはBRICSなど新興国への期待がはげ落ちたこと、アメリカの出口戦略が近いという不安から、相対的に安全な日本への投資が行われている状況。
  • 実体経済。輸入インフレ。2000年=100。2013年10月:素材原料247.3%、中間財116.5%、最終財87.2%(耐久消費財58.8・非耐久消費財107.6)。川上インフレ・川下デフレ。深刻な消費低迷。2012年10月をベースにすると、素材原料16.9%増、中間材5.4%増、最終財2.5%増(耐久消費財0.3減・非耐久消費財3.8%増)。この1年間で原材料は2割の価格高騰、最終財はインフレターゲットの2%のゾーンへ。勤労者家計への分配増へのタイムラグや切断、労働分配率上昇の意欲なしから、「格差と貧困」の問題を増幅。所得は増えない、物価は上がる。消費税増税をどう乗り切るか。
  • 成長戦略。今国会は成長戦略国会のはずだった。ビジョン計画ではなく実行計画が重要。それはプロジェクトデザインだ。海外での説明会で逆に失望売りがでる状況。中央リニアの前倒し。14年後に名古屋、それから18年後に大阪(9兆円)。PFIなどを使って一気に通す。7000万人の大ゾーンの誕生はアジアにとっても大きな意味。相模原。圏央道や外環道など首都圏が変わる。山梨。日本の国土軸を変えるプロジェクト。産業論からは中型旅客機。MRJプロジェクトが1年遅延。自動車以降のプロダクトサイクル。ロシア・中国の中型が3年以内にでてくる。第二のシアトルはどこか。愛知・東海・岐阜の可能性。
  • TPP:日本最大の弱点である食料自給率を60%まで上昇させる。
  • 日本は近代が消化できていない。科学とデモクラシー。科学は消化したが、デモクラシーを理解できていない。自ら勝ち取ったものではない。すぐに国家主義に向かう傾向。
  • 欧米のdivide and rule。内部対立を助長させるというやり方。
  • 1月17日「リベラル再生の基軸」を発刊。

終了後、同席した高校の同級生の松田君とガード下で軽く飲む。

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沢庵和尚、1831年(天保2年)の本日寂す。73歳。
将軍家光に人格的感化を与えた黒衣の宰相。国師号を辞す。夢。