北杜夫「どくとるマンボウ青春記」を数十年ぶりに再読

来年は「青春記」を書こうとしている。
このため、芦原すなお青春デンデケデケデケ」から始まって、北杜夫「どくとるマンボウ青春記」、そして井上ひさし「青葉繁れる」を読んでいる。

本日の「どくとるマンボウ青春記」は、再読である。
熱烈なマンボウファンであった時代に、航海記、昆虫記なども読んでいる。
この青春記は、北杜夫が40歳にならんとする時期の作品。
旧制松本高校から東北帝大医学部の間の時期の、ユーモアあふれる青春模様を愉しんだ。

どくとるマンボウ青春記 (新潮文庫)

どくとるマンボウ青春記 (新潮文庫)

父の斎藤茂吉の素顔の部分が面白かった。
「おっかないやりきれない父であった茂吉は、だしぬけに尊敬するにたる歌人として私の前に出現した。」

父の作歌の場面。「父はまだうずくまっていた。頭をかかえるようにして苦吟していた。そうして、茂吉という歌人が全身をしぼるようにして考え込んでいるさまは、私にやるせないような感銘を与えた。」

「父にはユーモア感覚というものが欠如している。そのくせ彼の言動、その文章に妙に可笑しみを誘うものがあるのは、すべての事柄にあまりにひたぶるで、鶏を割くにもノコギリを用い、一匹のノミを捕えるにも獅子のごとく全力をふるうからである。」

敬愛するトーマス・マンについて。
「マンは一語一語言葉を厳密に選びだす作業を午前中だけつづけ、いかに感興がのろうと、午になればこれを打ち切ってしまう。」「神聖な午前」

北は、ドストエフスキーを世界最大の作家と思い、漱石の三四郎も完璧な文章としている。太宰については若者に自分ひとりのために書いたような錯覚を与える術を持っていると書いている。

北の独白。

  • どんな些細な考え方ひとつにせよ、一度自分の頭脳で濾過したものでなければ、容易に信じる気になれない。
  • わかりきったようなことになお深い謎を見出せるのは選ばれた人たちだ。
  • 自殺するならとにかく三十歳まで生きてみろ、ということだ。
  • 自己を高めてくれるものはあくまでも能動的な愛だけである。
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今日の収穫

  • けいこがつらいと思ったことはない(大鵬
  • 先祖と比べて小さいと思われないよう演じるのみです(12代目市川團十郎
  • 役者には、うまい、へたは関係ない。強いて言えばそこには人間学しかない(三國連太郎
  • 球が止まって見える(川上哲治
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2013年の訃報より。50代から101歳まで。
大島渚(80。大鵬(72)。柴田トヨ(101)。常盤新平(81)。安岡章太郎(92)。加藤寛(80)。市川團十郎(66)。高野悦子(83)。中嶋嶺悠76)。チャベス(58)。山口昌男(81)。坂口良子(57)。サッチャー(87)。三國連太郎(90)。田端義夫(94)。佐野洋(84)。牧伸二(78)。中坊公平(83)。瀬戸雄三郎(83)。なだいなだ(83)。吉永祐介(81)。吉田昌郎(58)。藤圭子(62)。豊田英ニ100)。山内溥(85)。山崎豊子(88)。中村昌枝(80)。やなせたかし(94)。天野祐吉(80)。岩谷時子(97)。川上哲治(93)。島倉千代子(75)。堤清ニ(80)。マンデラ(95)、、。