佐藤一斎「重職心得箇条」

佐藤一斎が、自藩の巌邑藩の重職のために書いた心得「重職心得箇条」が実にいい。
私自身の心に響いたところ、自分が及ばないところを抜き出して戒めとしたい。

  • 1.重職と申すは、家国の大事を取計べき職にして、此重の字を取失い、軽々しきはあしく候。、、些末を省く時は、自然と大事抜目あるべからず。斯の如くして大臣の名に叶うべし。
  • 2.大臣の心得は、先ず諸有司の了簡を尽さしめて、是を公平に採決する所其職なるべし。、、有司を引立て、気乗り能き様に駆使する事、要務にて候。、、。功を以て過を補わしむる事可也。、、人々に択り嫌なく愛憎の私心を去て、用ゆべし。、、平生嫌いな人を能く用ると云う事こそ手際なれ。
  • 3.家々に祖先の法あり、取失うべからず。又仕来仕癖の習あり、是は時に従て変易あるべし。、、、時世に連れて動かすべきを動かさざれば、大勢立ぬものなり。
  • 4.、、先ず今此事を処するに、斯様斯様あるべしと自案を付け、時宜を考えて然る後例格を検し、今日に引合すべし。、、自案と云うもの無しに、先ず例格より入るは、当今役人の通病なり。
  • 5.応機を云う事あり肝要也。、、物事何によらず後の機は前に見ゆるもの也。其機の動きを察して、是に従うべし、、、、。
  • 6.公平を失うては、善き事も行われず。、、、姑く引除て活眼にて惣体の対面を視て中を取るべし。
  • 7.衆人の厭服する所を心掛べし、、、苛察を威厳と認め、又好む所に私する所は皆小量の病なり。
  • 8.重職たるもの、勤向繁多と云う口上は恥べき事なり。、、
  • 9.刑賞与奪の権は、人主のものにして、大臣是を預るべきなり。
  • 10.政事は大小軽重の弁を失うべからず、緩急先後の序を誤るべからず。、、、着眼を高くし、惣体を見廻し、、、、手順を遂て施行すべし。
  • 11.胸中を豁大寛広にすべし。、、、人を容るる気象と物を蓄る器量こそ、誠に大臣の体と云うべし。
  • 12.大臣たるもの胸中に定見ありて、見込みたる事を貫き通すべきは元よりなり。然れども又虚懐公平にして人言を採り、沛然と一時に転化すべき事もあり。
  • 13.政事に、、此所に手を入れて信を以って貫き義を以って裁する時は、成り難き事はなかるべし。
  • 14.政治と云えば、、、何事も自然の顕れたる儘にて参るを実政と云うべし。、、、手数を省く事肝要なり。
  • 15.風儀は上より起るもの也。人を猜疑し陰言を発き、、、甚あしし。、、其事の顕れたるままに公平の計いにし、、、。
  • 16.物事を隠す風儀甚あしし。
  • 17.人君の初政は、年に春のある如きものなり。、、刑賞に至ても明白なるべし。、、、
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