高木桂蔵「客家 中国の内なる異邦人」--客家を語る・中国を語る

高木桂蔵「客家 中国の内なる異邦人」(講談社現代新書)を読了。

客家 (講談社現代新書)

客家 (講談社現代新書)

とう小平・朱徳葉剣英李鵬洪秀全孫文宋慶齢宋美齢王陽明朱子リークアンユー李登輝、、、。
すべて客家である。
その土地に元からいる人が主であり、そとから来た人が客であり、客家はそとから来た人々である。
中国では宋代に初めて戸籍ができた。この時、土着民を主とし、流れ者を客と名づけた。
客家は全人口の4%にも満たない少数民族であるが、中国の近代・現代史において重要な役割を果たしてきた。

客家の精神は、強い団結心・進取と尚武の精神・文化伝統保持・教育の重視・政治指向・女性の勤勉性などがあげらえる。
また、タイガーバームガーデンの胡文虎は、客家の精神として、刻苦耐労の精神・剛健不羈・創業勤勉・団結奮闘の4つをあげている。
華僑は経済に重点を置くが、客家は警官・軍人・政治家・会計士・土匪・建築土木・教師などにつくことが多い。
客家の特徴は血のつながり・土地のつながりを中心としたネットワークである。

以下、客家のことわざ。

三兄四弟一条心 門前土地変黄金
読書耕田・忠臣孝子
人平不語 水平不流
謙者成功 誇者必敗
病由口入 禍従口出

台湾では人口2千万のうち300万人が客家人である、
シンガポールは1959年の自治連邦発足時9人の閣僚のうち、リークアンユー・ゴーケンスイなど4人が客家だった。
インドネシア400万人の華僑のうち、150万人が客家系である。
インド、オーストラリア、タヒチ、ハワイの華僑の2割、中米、、、。
香港・マカオの650万人のうち、客家人は150万人。

この本の最後には、華南経済圏(中国南部の広東省と,1997年7月に返還された香港を基盤とする経済圏)は、香港・台湾・シンガポールをまきこんだ一大中国人経済圏を作りあげるのか、それとも北京中央の圧力に屈するのか、と二つの方向を示している。
そして高い可能性として、華南経済圏の成功が、逆に北部の大陸部分を包み込んでしまうだろうと予測している。
この本が書かれた1991年から20年たって、その予測は大中華圏として実現している。

まさに客家を語ることは中国を語ることだ。