辞世の歌

郷里の同人誌「邪馬台」の2014年夏号が届いた。
表紙は、黒田官兵衛中津城

毎回思うことだが、内容が多彩で充実している。
評論。詩。漢詩。旅行記。随筆。随想。評伝。自分史。研究。短歌。川柳。俳句。創作。
人口7万ほどの地方都市で営まれている文化的生活としては驚くほど高いものがある。
通巻191号ということは、季刊であるのでもうすぐ半世紀になろうとしている。
こういった文化活動に東京から参加するのも、郷里への貢献である。またこういった同人になり同人誌を読むのも貢献だから、東京に出ている仲間にも広げていきたいものだ。

今号は、私は随筆と随想を書いている。
随筆:「朝日歌壇に母の歌を発見」。
随想:読書悠々2。
奇縁まんだら(瀬戸内寂聴)。奇縁まんだら・続(瀬戸内寂聴)。「表裏 井上ひさしの協奏曲」(西舘好子)。「弟 徳富蘆花」(徳富蘇峰)、「ナニカアル(桐野夏生)。「大遺言書」シリーズ(語り森繁久弥文久世光彦)。

母の久恒啓子は、随想と短歌選。
随想:辞世の歌。
 山上憶良  士(をのこ)やも空しかるべき万代(よろずよ)に語り告ぐべき名は立てずして
 豊臣秀吉  露とをち露と消えにしわが身かな浪速のことは夢のまた夢
 浅野内匠頭 風さそふ花よりもなほ我はまた春の名残をいかにやせむ
 乃木希介  うつし世を神さりましし大君のみあとしたひて我は行くなり 
 乃木静子  出でまして帰ります日のなしと聞く今日の御幸にあふぞ悲しき
 三島由紀夫 散るをいとふ世にも人にもさきがけて散るこそ花と吹く小夜風
         益荒男がたばさむ太刀の鞘鳴りに幾年耐へて今日の初霜
 栗林忠道  国のため重きつとめを果し得で矢弾尽き果て散るぞ悲しき
         醜草の島に蔓こるその時に皇国の行手一途に思ふ

短歌:邪馬台歌壇の選。選者詠。
 ささくれし手にサファイアの似合はずになりぬなければもっと淋しき
 桜花散りのまがひに小授鶏がチョットコーイとせきたてて啼く
 花散らしの雨しき振りぬ翌朝は花むしろ敷かむ庭に道路に
 散りぎはが好きといふ子が荒れ気味の桜吹雪の日に帰り来ぬ
 午前二時5弱の地震(なゐ)に飛び起きぬいつか見し伊方原発の沖

近藤(久恒)恭子。一首目と四首目がいい。
 宇野千代の着物の柄を描くよう濡れし舗道に桜散り敷く
 変えるたびちっちゃくなりし母の背に合わせて物干し丈低くする
 ふるさとの上毛新聞に包まれて母の白菜大寒に届く
 天空にそびえる部屋で育つ孫地表に下りよ春を捜しに