川勝平太編「海から見た歴史--ブローデル「地中海」を読む」

川勝平太編「海から見た歴史--ブローデル「地中海」を読む」(藤原書店)を読了。

海から見た歴史―ブローデル『地中海』を読む

海から見た歴史―ブローデル『地中海』を読む

グローバルヒストリーの原点たる名著「地中海」(ブローデル)を対象としたシンポジウムのをまとめた本である。
ブローデルは20世紀後半の最高の歴史家。
編者は「文明の海洋史観」の著者・川勝平太
大部の本物の「地中海」を読む前に、通読してみた。

川勝平太

  • どこから来たのかがわからなければ、どこに行くのかはわからない、、。
  • 世界史を多島海という観点からとらえかえす。一つの島が自立しながら、海によってつながっている。つなげること、つながること。ネットワークである。
  • 梅棹忠夫の生態史観の構成要素は遊牧社会と農業社会であり、大陸に根を張った陸地史観。
  • 物産複合の変化による社会変容は、島国の場合、島の外部から舶来する文物によって決定的なインパクトをもってひき起こされる。
  • 生態史観は暴力を社会変容の主因と見るのに対して、海洋史観は押し寄せる外圧を主因と見る。
  • 日本は3700余りの島からなる島国。海洋指向の時代と内陸指向の時代を交互に繰り返している。奈良・平安時代鎌倉時代、江戸時代は内陸指向。奈良以前、室町時代、明治以降は海洋指向。転機は海洋指向の末期に、白村江の海戦、朝鮮出兵、太平洋戦争の敗北と失敗がある。産業革命によってヨーロッパはイスラム文明の海域圏から自立し、日本は中国文明の海域圏から自立した。

鈴木薫

  • 地中海世界をその広大な空間的拡がりと、長大な時間的拡がりにおいて全体的に捉える試みを通じて、彼独自の形における「全体史」の実現を試みた。
  • 無数のイマージュをその一片一片とする巨大なモザイク画として、巨視的な全体像を提示していく手法。

石井米雄

  • 日本史と東洋史と世界史。全体史。文部省未公認のアジア史。

網野善彦

  • 鎖国時代の4つの口。薩摩・琉球・東南アジア・中国。対馬・朝鮮。長崎・中国・ヨーロッパ。松前アイヌ・北東アジア。
  • 和寇の実態は朝鮮半島南部と済州島、西北九州あたりの海の領主、商人たちが海を舞台に形成した商業ネットワーク。

1996年に初版。もう20年近く前であるが、川勝平太はまだ48歳の少壮の歴史学者の時代。すでにグローバルヒストリーという視野で研究をしている。