渡辺京二「無名の人生」

エッセイや人生論などは、その人の「幸福論」であるともいえる。
渡辺京二「無名の人生」(文春新書)も、自分の一生の主人であろうとした地方在住の男の幸福論だ。著者名とタイトルに惹かれて読了。

無名の人生 (文春新書)

無名の人生 (文春新書)

この渡辺京二氏が書いた「逝きし世の面影」(平凡社)という文庫版600ページの大部の書物を読んだことがある。この本の記述の美しさにひかれて一気に読み終えるのが惜しくなり、毎日少しづつ読み進めるという読み方をしてみた。一ヶ月ほどは朝の短い時間、心が洗われる様なすがすがしい気分を味わった。正真正銘の名著である。

この語りおろしの本は、好きなことだけをやってきて、それでもなんとかやれると、励まされる人がいれば幸いというタッチで書かれている。
章立てのタイトルは、「人間、死ぬから面白い」「私は異邦人」「人生は甘くない」「生きる喜び」「幸せだった江戸の人々」「国家への義理」「無名のままに生きたい」。

「成功」「出世」「自己実現」などはくらだない、というメッセージで、生きるのがしんどい人々への応援歌である。

  • 人間の生命に限りがあるのは、退屈さにピリオドを打つためではないでしょうか。
  • 人間にとって大切なのは、「自分中心の世界」、コスモスとしての世界です。
  • 地方にいて知的ディズアドバンテージを感じたことは、一度もありません。
  • 自分が何をやりたいのか、何が向いているのかが分かったら、一人前になるまで辛抱してやればいい。
  • 清潔な生き方を目指したほうがよほどいい。、、心の安定が得られるし、澄んだ気持ちで生きてゆける。
  • 人間が生きていくうえで何が大事か。どんな異性に出会ったか、どんな友に出会ったか、どんな仲間とメシを食ってきたか、これに尽くされると私は思います。
  • 私の理想は、無名のうちに慎ましく生きて、何も声を上げずに死んでしまうことです。
  • 「陋巷に生きる」というのが好きで、理想の生き方だとさえ思うのです。

人生観、幸福論というのは、やはりその人の性格に大いに影響を受けていると思う。
自分とは違う人生観ではあるが、共感するところもある。

「評伝 宮崎滔天」「北一輝」「もうひとつのこの世 石牟礼道子の宇宙」など、渡辺京二の本を読むことにしたい。

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今日は午前中の勉強の後、相模原市博物館を訪問。北里柴三郎展をやっていると思ったが、まだだった。それでプラネタリウムを観て帰ってきた。
NHK大河ドラマは、いよいよ朝鮮出兵。出兵に反対だった官兵衛の立場で描かれている。秀吉を蛇蝎の如く嫌う韓国の人たちの心証を考えての筋書きだろう。







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