伊集院静「無頼のススメ」--日本人は必ずまた戦争を起こす

伊集院静「無頼のススメ」(新潮新書)を読了。

無頼のススメ (新潮新書)

無頼のススメ (新潮新書)

無頼とは頼るものなしという覚悟のことだと喝破する著者が語る自立、独立独歩のすすめの本。
本人の言葉も面白いが、父や肉親の言葉、そして作家らしく古今東西の人の生き方に目を注いでいる。

  • チャーチルヒトラースターリンも、会ってすぐに「ああ、この男は信用できない」と見切っている。
  • 今の若者には確かにかつての戦争の責任はない。しかし、戦争の真実を知り、再び戦争を繰り返さないことに関しては責任がある。(アウシュヴィッツ収容所のリーベヘンシェル所長)-
  • セックスとは、果てるたびに小さな死と出会うこと。(ジュルジュ・バタイユ
  • 長く生きるというのは素晴らしいことなんだ。だけど長く生きるためには術(すべ)がいる。術をマスターしなくてはね。(色川武大
  • 仕事というのは誰かの役にたってこそ仕事なんだ。ばくち打ちは一から十まで自分だけで他人のことなどおかまいなし。そんなの仕事じゃないだろう。(車券師の名人の言葉)
  • ギャンブルは九勝六敗を狙え。(色川武大
  • 二日や三日徹夜するぐらいなら誰でもできる。やっぱり、運だな。(佐治信忠)
  • 相手を恐れることはないが、練習をしないことに対しては恐怖を感じる。だから鍛錬し続ける。(内山高志:ボクシングの世界チャンピオンで8度の防衛)
  • 虚しく往きて実ちて帰る(空海
  • 日本人は常に大勢に流れる(イザベラ・バード
  • 父(13歳で朝鮮半島から日本にわたってきた)
    • いいか、金で揺さぶられるな、金がないからといって誰かに揺さぶられるような人間になるな。
    • 人に物乞いをしたら、もう廃人と同じだ。
    • 軍人になると自ずと現れてくる本性を実際に目にして、日本人はいつかまた戦争を起こすだろう。その時、真っ先にお前たちは槍玉に挙げられる。根っこは簡単にはなくならない。日本人は必ずまた戦争を起こす。
  • 母が祖母から言われた言葉。
    • 「男の人殺しが縄をかけれて連れ回されているときに、絶対に石を投げたりしてはいけない」。「身体を売るために町に立っている女の人に、パンパンとか夜鷹とか絶対に言ってはいけないし、子どもの口からも言わせてはいけない」。

伊集院静

  • 「美の旅人」(人の旅人)
  • 「怒りがわく」という心の在りよう。
  • 差し伸べている手の上にしかブドウは落ちてこない。
  • 運や流れを引き寄せるのに必要な心構え。うつむかない。後退しない。ウロウロする。
  • 何らかの「核」を持った人間が運を逃さず、作り続けた作品だけが時代を超えて残る。
  • 人間というのはカニみたいなもんだな。
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忌日。

  • 市川左団次(二代目):いまできない事は十年たってもできまい。思いついた事は、すぐやろうじゃないか。
  • 市之瀬広太:彫刻は決して難しいものではなく、感覚的、直観的に見ればよい。
  • ジョン・キーツ:知性を高める唯一の方法は、何事も決めつけないこと。あらゆる考えに対して心を広くすることである。

誕生

  • 平櫛田中:六十、七十洟垂れ小僧、男盛りは百から百から。
  • 倉田百三:純な青年時代を過ごさない人は深い老年期を持つことも出来ないのだ。
  • 池田満寿夫:能力や才能は、それを認め活用してくれる能力や才能がなければ成り立たないのだ。