映画「日本のいちばん長い日」

映画「日本のいちばん長い日」を初日の本日、橋本のシネコンで観た。

ポツダム宣言を受諾し、大東亜戦争を終結させ、天皇による8月15日の「終戦の詔勅」に至るまでの物語。
8月14日の深夜から15日の未明におきた宮城事件は、陸軍省近衛師団の一部将校のクーデター未遂事件。このことは昭和史の語り部・半藤一利さんの著作で知っていたが、その全貌が今回わかった。

鈴木貫太郎内閣は1940年4月に誕生し、終戦という難題を終えるにあたって、天皇の終戦の意志を拝し禁じ手の聖断を二度までも仰いだ鈴木首相は、そうするしかできなかった世代の責任を痛感し、今後は若い人の時代であると退陣する。
陸軍の輿望を担って登場した阿南陸軍大臣は、内心を秘めたまま、表向きは若手将校に賛同しながら、大きな暴発を防ぐ。そして陸軍への責任をとって自決する。見事な出処進退だ。
1929年から1933年まで天皇側近の侍従武官をつとめたが、当時の侍従長鈴木貫太郎だった。天皇は阿南に親しみを感じ、阿南は鈴木の懐の深い人格を尊敬していた。この3人の人間関係と信頼関係が終戦という難事業を完遂させたのだ。

この二人の演技は素晴らしかった。
何事も始めるのは簡単だが、終わり方は実に難しい。

  • 原作はノンフィクション作家・半藤一利。「戦争を始めることはある意味で簡単であるが、終えることは本当に難しい。、、、いまの『戦争をしない国』の原点がその事実の上にあるこちをあらためて痛感している。」
  • 脚本・監督の原田真人黒澤明監督を敬愛する)。「これは昭和天皇と阿南陸相鈴木貫太郎首相の3人を中心とする家族の物語です」「『国を残すために軍を滅ぼした』という姿勢を今後も継承してもらえることを願っています」
  • 五木寛之。「愚かしさは罪であり、知ろうとしない素直さは恥であることを、あらためて反省させられる夏である」
  • 孫崎亨。「昭和天皇の終戦への強い意思と、鈴木首相の狡猾さと、阿南陸相の自己犠牲がなければ、、」「異常な人間が権力の中枢にきた時、これへの抵抗が如何に難しいかを示した。それは現代政治にも通ずる」

登場人物の年齢が興味深い。
昭和天皇44歳。鈴木貫太郎首相77歳。阿南陸軍大臣58歳。木戸幸一内務大臣56歳。東郷茂徳外務大臣62歳。梅津美治郎参謀総長63歳。東条英機元首相60歳。米内光政海軍大臣65歳。迫水久常書記官長43歳。鈴木一秘書官43歳。畑中健二少佐33歳。

「終戦の詔勅」の内容を吟味する内閣での議論の中で、「選挙区必ずしも好転せず」を巡る海相陸相の激突は陸軍と海軍の対立の抜き差しならない関係を印象づけた。
また、迫水書記官長が「安岡先生によれば、、」といって、「義命の存する所」とすべきと言ったが、毛結果は「時運の命ずる所」となった場面は、安岡正篤書物で知っていた。
「義命の存するところ」という春秋佐伝の言葉は、道義というものを至上命題とするという目的で入れようとしたが、最終的には「時運の命ずるとこと」に変わってしまった。これは風の吹くままという意味であり将来の国家再建に向けての財産とはならない。安岡は戦争を止める理由と国家の命題を同時に入れ込めなかったことを残念がったとのことである。

懸案となっていた千葉の木貫太郎記念館の訪問を計画したい。
大分県竹田市の出身の父を持つ阿南大将のことを調べたい。

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夏休の初日。午前中は大学院の修士論文を読む。午後は映画を見た後、近所の「いこいの湯」で汗を流し、夜は家族での外食。

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