山田正彦「TPP秘密交渉の正体」(竹書房新書)

山田正彦「TPP秘密交渉の正体」(竹書房新書)を読了。

著者は民主党政権鳩山内閣の農林水産副大臣を経て、2010年6月の管内閣の農林水産大臣を経験した人物である。

各章のタイトルは以下のようになっている。
「TPPの原点は北米自由協定にある」「日米並行協議がTPPよりも恐ろしい」「TPPは日本にとって百害あって一利なし」「韓国はどうなったか」「食の安全は本当に守れるのか」「日本の農業はTPPでどうなるのか」「医療も介護も金持ちでないと受けられない」「安い労働力が入ってきて、日本人の賃金が低下する」「軽自動車の税負担軽減措置がなくなる」「地方自治はTPPでどうなるのか」「ISD条項で国の主権は失われる」「インターネットの自由が損なわれる知的財産権の交渉」「経済のグローバル化が国家の自由独立を損ねる」「秘密協定であることが恐ろしい」

分野は広範に及んで、TPPの危険性について警告を発している。
ここではアメリカとFTAを結んでいる韓国はどうなったか、を拾ってみる。

  • 1年で畜産業の7割は廃業。農業は壊滅的な打撃を受けている。
  • 医薬品の価格が高くなっている。
  • 事前協議で一番強力な反対団体、農協を解体。
  • 遺伝子組み換え食品は無条件で受け入れる。
  • 株式会社経営の病院の参入を認めた。
  • アメリカ産牛肉の輸入条件を緩和。
  • アメリカの安全基準で税関をパスした自動車はそのまま輸入できる。
  • 排ガス基準を下げて環境基準をアメリカに合わせた。
  • ラチェット条項をのんだ。「一度決めたルール・基準はもとに戻せない」
  • 食料自給を断念。
  • 国内法の63本をアメリカの制度にならって改正。
  • 貧富の格差、二極化が加速。
  • ISD条項で政府は企業から損害賠償の申し縦を受けている。

この本は2年前に出版されている。その後、韓国がどうなったかを調べたい。

  • 知研の八木会長来訪。

「名言との対話」2月1日。山県有朋

  • 「弱い羊だけが群がっている世の中など嫌だ。虎の寝そべっている野辺を突き進め。」
    • 佐賀の大隈重信と長州の山県有朋とは1838年の同年に生まれて、奇しくも1922年の同年に亡くなっている。明と暗、陽と陰、饒舌と無言、舌鋒と腕力、人気と不人気、世論と権力、、、、。2月1日は山県の国葬の日である。
    • 大隈の葬儀は国民葬であり30万人が弔問に訪れた。それにひきかえ最後の元勲・山県の葬儀は国葬であったが、大臣さえも欠席する人もあったくらい寂しいものだった。国と葬の間に「民」があるかどうかで、これほど違った。総理経験者という意味では同じだが、大隈は私学の雄・早稲田の初代総長であり、山県は帝国陸軍の創設者であり総帥であった。二人は全く対照的だ。
    • 天才ではなかった山県は、幕末から明治にかけての生命の危険と権力を巡る攻防という疾風怒濤の日々をくぐり抜け、軍事では大村益次郎という天才、政治では大久保利通という天才の後釜になってしまった。山県は彼らの模倣をするしかなかったのではないか。彼らの思想の進化ではなく、彼らの路線の深化に生きるほかはなかったのだろう。それが評判の悪い、息の詰まるような形式主義的世界になっていく。誰もが山県のそのうっとうしい鎧を敬遠したのである。
    • この言葉の示すように常に「一介の武弁」であると自称していた山県は、そういった言葉とはうらはらに政治力もあり、原敬の本格的な政党内閣も容認する度量もあった。また庭造りにも造詣が深く、東京の椿山荘、京都の無鄰菴、小田原の古稀庵庭園は、自ら想を練り岩本勝五郎や7代目小川治兵衛をして築かせたものである。その庭は今でも椿山荘で偲ぶことができる。