桐野夏生「バラカ」(集英社)

桐野夏生「バラカ」(集英社)を読了。

バラカ

バラカ

桐野夏生の作品は比較的よく読んでいる方だろうか。
デビューは遅かったのだが、その後、話題となる小説を次々と発表している。
毎回、趣向を変えているが、この力量はただものではない。

42歳、「顔に降りかかる雨」で江戸川乱歩賞
27歳、「OUT]で日本推理作家協会賞
48歳、「柔らかな頬」で直木賞
52歳、「グロテスク」で泉鏡花賞
53歳、 「残虐記」で柴田錬三郎賞。
54歳、「魂萌え!」で婦人公論文芸賞
57歳、「東京島」で谷崎潤一郎賞
58歳、「女神記」で紫式部文芸賞。
59歳、「ナニカアル」で島清恋愛文学賞
60歳、「ナニカアル」で読売文学賞

今回は、2011年3月11日の東日本大震災の前後から、大阪オリンピックまでの数年間を中心にした、バラカという少女をめぐる物語である。
現実と虚構が入り混じったノンストップ・ダーク・ロマン。

地震津波、そして福島の原発四基が爆発し、放射能が止むことなく飛散し続けて、東北と関東、そして東京も汚染された状態となり、首都も大阪になっている。

じいさん決死隊、「聖霊の声」教会、ドバイのベビー・スーク、閖上、巨大なカタストロフィー、地獄の門横田基地、東日本壊滅、震災履歴、棄民、原発推進、大阪オリンピックが開催できるか、過去を取り戻す、反原発・棄民・原発推進の象徴・バラカ、天皇京都への行幸内部被曝。政府による情報検閲、東京勤務には危険手当で1.2倍、、、、、。

この想像を絶する体験をした少女は、「エピローグ」では、18歳で獄中結婚。20年以上の戦いの末に上無実の罪が晴れた伴侶が出獄、「ミカ」と名付けた子供を授かる。40歳を過ぎてから北海道での定住生活を始める。

悪魔に取り憑かれたようなこの少女の行く末を案じながら読み進めたのだが、最後は少し安心した。
バラカ(薔薇香)とは神の恩寵という意味である。

熊本地震の惨状を見ながら、、、。
安部首相は国会で「リーマン・ショックや大震災のような重大な事態が発生しない限り、消費税を引き上げる」といっていた。これを主たる理由として消費増税を延期するだろう。安全保障面でも、この災害にオスプレイを投入することになる。
この政権はついているのだろう。
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「名言との対話」4月17日。大村はま

  • 「子どもに考えさせるということをした人が、いちばん教師としてすぐれている」
    • 国語科教師として生涯を貫き、数多くのユニークな実践指導を重ね、主宰した「大村国語教室」では、子供たちだけでなく、後輩の教師や研究者、そして親にも貴重な刺激を与え続けた教育者。4月17日に死去。
    • 教師のあり方についての言葉がいい。つい忘れそうになる仕事の本道を思い起こさせてくれる。以下、「新編・教えるということ」(学芸文庫)から。
    • 昨日よりも今日というように、気づいたり工夫したり、教師自身に成長の実感がある。ありあわせ、持ち合わせの力で授業をしない。何事かを加える、何事かを加えられて教室を出る。
    • 自分の本職たる「教える」ことがすぐれた技術、特殊技術になっていなければならない。
    • 見方を深くするというためには、教師自身が身を挺した実物をみせなければならない。
    • ぬかるみで苦労している車にちょっと指で触れるとすとぬかるみからぬけてからからと車がすすんでいく。これが一級の教師。
    • ひとりひとりが自分の成長を実感しながら、内からの励ましに力づけられながら、それぞれが学習という生活を営む、そういう状態。すべての生徒がそれぞれ成長しているという実感、快感。
    • 「段落。中心。つながり。自分の発見。自ら生み出したもの。区分け。関連を考える。構成力。関係、順序。、、、」。大村はまの作文教育は、私の図解教育と同じ思想だった。