川端康成「雪国」(新潮文庫)を再読。

川端康成「雪国」(新潮文庫)を再読。

雪国 (新潮文庫 (か-1-1))

雪国 (新潮文庫 (か-1-1))

近代日本の抒情小説の古典で、最高峰の日本の小説である。
大学生の時代に読んだ記憶があるが、数十年ぶりに再読した。

「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。」から始まり、「踏みこたえて目を上げた途端、さあと音を立てて天の河が島村のなかへ流れ落ちるようであった。」で終わる。

親譲りの財産で無為徒食する主人公は、フランス文人達の舞踏論を、ほそぼそと翻訳している男である。
生きることに切羽詰まっている若い女・駒子の清潔さを哀れみながら、ゆきずりの愛以上に踏み込まない自らを哀れむ主人公は、それを冷ややかにみる葉子のはかない美しさにも惹かれる。
その三者の心の動きを越後湯沢温泉と思しき、雪深い温泉町の自然を背景に、実に見事な文章で綴られている。心理小説。
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  • オーディブルで浅田次郎「私の幸福論」:40歳での遅いデビュー。子供の頃から小説家になると決めていた。嘘つきだった。禍福はあざなえる縄の如し。中国のことわざ。、、。
  • サライ」:堀文子97歳:逆上。科学者志望。過去に興味なし。虹。旅で未知に出会う。禅:日常生活での工夫。円相は悟り。禅の言葉:挨拶、行脚、安心、有頂天、喝、工夫、脱落、日々是好日、普請、平常心、老婆心、、。調心、調息。「生きて帰ってきた男」。「ひとりの記憶」。
  • 「至知」

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「名言との対話」5月6日。東山魁夷

  • 「時が過ぎ去って行くのでは無く、私達が過ぎ去っていくのである。」
    • 文章になっている言葉からもこの絵描きの豊富な教養を知ることができる。平生からの信条は「生かされている」であり、この風景画家は天の声に従って日本の風景を生涯にわたって描き続けた。5月6日、東山魁夷逝く。
    • 評価され無い時代も長く、途中で兵隊にとられたりして画家として世に出るのはずいぶんと遅かったとのことだ。長い準備期間を経て本製作に入ったようなものだと述懐しているが、人生という大きな舞台で大ぶりの絵を描くには、準備期間が大切ということを暗示している。
    • 善光寺の近くにある長野信濃美術館・東山魁夷館を訪問し、この風景画家の作品に深い印象を受けた。61歳でドイツ・オーストリアの旅にでるがこのときの心境を記した言葉に感銘を受けた「このまま安定した歩みを続けることは老いを意味し、心の躍動を失うのではないか。命の鼓動を取り戻すべきではないか」
    • 63歳で描くことを決心した唐招提寺障壁画では、鑑真和上との対話をする。山と海という二つの大きな主題である日本の風景を訪ね歩き、中国の風景を描く旅に出る。そして67歳で第一期完成、72歳で第二期を完成させる。
    • 「無常と流転。流転とは生きているということ」という言葉も東山魁夷の言葉だ。常に流転し、変化し続け、いずれ散る命。その命と日本の優しく厳しい自然との交歓を描くという使命感を持った画家の透徹した人生観がここにある。