リレー講座:藤原帰一「アメリカ大統領選」−−トランプは勝てない

リレー講座。
藤原帰一東大教授「国際秩序の現状 アメリカの後退と国際紛争」。

アメリカ大統領選。

  • 共和党の弱体化。分裂とオウンゴールクリントン勝利)へ。
    • 主流派(財界)と保守派(新興)に分裂。
    • 左右するのは無党派オハイオ州ペンシルバニア州フロリダ州(大都市にマイノリティ。
    • トランプ:自己資金を使わず過激発言でテレビ・ラジオに出演し、トランプ現象。
      • 「メキシコ国境に壁」「イスラム教徒入国禁止」「日本・中国は雇用を奪うから高関税を」「日本は安保ただ乗り論(全額負担か、駐留米軍の引き上げか)」。
    • トランプの政策
      • 1:移民・マイノリティの排斥:アジア、ヒスパニック、イスラムなど白人以外を差別。怒れる白人男性が支持。過去はマイノリティへの攻撃は自殺行為だったが、、。女性にも暴言(女性の6割が敵視)。
      • 2:保護主義:国内産業の保護(本来は民主党の政策)。TPP反対。
      • 3:孤立主義モンロー主義。国外にはかかわらないという考え方も根強い。アメリカ国内にテロリストは入れない。ISへの地上軍の派遣には触れない。
    • 予備選(投票者は少ない)と本選の違い。本選ではトランプは負ける可能性が高い。女性、ラテン、イズラム、アフリカ系を敵にまわしているから。
    • 民主党クリントンは嫌いな人が多い。経済は下降局面で不利だが、共和党は分断。勝つ可能性が高い。
  • 冷戦後の世界
    • 冷戦後前半:1990年−2003年。
      • ソ連解体、中国天安門事件。アメリカは圧倒的に優位。イラク、アフガンはやってはいけない戦争だった。力の優位の過信があった。
    • 冷戦後後半:2003年以降。
      • 戦争には勝った、しか勝てなかった。イラクとアフガンの占領に失敗。戦わないアメリカへ。影響力の低下につながる。オバマは中途半端な介入となった。カーターに似ている。
    • 中国のAIIBは弱さの表れ(単独ではできない)。ロシアも弱い。
    • アメリカ:経済は強い。軍事も強いが戦う意志に疑問あり。アメリカは弱くなる。

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「名言との対話」5月12日。澤田美喜

  • 「どんな子どもでも、人間として生を受けた以上、立派に育っていかなければなりません。」
    • 三菱財閥の基礎を築いた岩崎弥太郎の息子・岩崎久弥の娘であった美喜はお転婆で家族を困らせ、令嬢にあるまじき行為で見合いを破綻させていたが、澤田廉三(外務次官)、後に初代国連大使となる澤田廉三と結婚する。若い頃はアルゼンチン、中国、イギリス、フランス、アメリカと夫について世界をまわるが、イギリスのドクター・バーナーズ・ホームでのボランティアが、美喜の運命を変える。5月12日、スペイン旅行中に天に召される。78歳。
    • 戦後、進駐軍と日本女性の間に生まれた混血児の孤児院を創立した澤田美喜の記念館は、神奈川県大磯の駅前の深い緑の中にある。美喜のことは、東京上野の旧・岩崎家住宅見学の時に知り、大磯にある記念館を訪ねた。澤田美喜は大磯のエリザベスサンダースホームでの世話に後半生を捧げる。日本で長く暮らしたエリザベス・サンダーズ女史の遺産がこの孤児院に贈られ、この名前になった。2000人を超える孤児を育て、仲立ちとなってアメリカへ養子を出した子どもは500人を超える。美喜の息子の澤田久雄(ソプラノ歌手)は由紀さおりの姉の安田祥子の夫である。
    • 澤田美喜が救った孤児達は、敵国の兵士と日本女性との混血児といういくつもの不幸を背負った子供たちだった。差別、圧迫、羨望、偏見、憎悪などと戦う、想像を絶する困難な日々であった。その原動力は、この言葉にあるように、まっとうな人道主義であった。美喜はこの天命に命を捧げ、2000人の母となった。尊い人生である。