「没後50年 大拙と松ヶ岡文庫」展−−大拙、寸心、自案

多摩センターの多摩美術大学美術館で「没後50年 大拙と松ヶ岡文庫」展を開催中だ。昨日、観てきた。

松ヶ岡文庫は、師の釈宗演(1860-1919年)の遺志を継承するための仏教文庫。7万冊。ここで大拙が起居、研究、執筆した。初代理事長は鈴木さだ太郎大拙)、二代目は出光佐三(1885-1981)。
主要著書は40冊超。

師弟:釈宗演(師)−−鈴木大拙(1870-)−−古田紹欽(1911-2001)・柳宗悦(1889-)・中村元(1912-1999)・出光佐三(1885-1981)。
友人:西田幾多郎(寸心)。安宅弥吉(自案)。大拙もなどの居士号は、出家した僧侶でなく、在家でありながらも優れた仏教修行者である。

禅は、主客の対立、精神と物質という対立を止揚して、「心」(菩薩心)という「一」なる地平を切り拓く。「一」なる真如(法身)から「多」なる森羅万象が生みだされてくる。真如(法身)は「空」「海」「太陽」。(以上、パンフの解説から)

  • 「日本的霊性的自覚は鎌倉時代に入り大いに其の内容の豊富性を加え就中禅はその中に在りて本質的に重要なる地位を占むるに至れり、、今後我が国が世界文化の各方面に対し何等か寄与し得るものありとせば禅は其の最も有力なる一項目たるべく、、」(財団法人松ヶ岡文庫設立趣意書)
  • 「自力を尽くさなければ本当の他力というものは出てこない。、、自力が尽きた、それと同時に、他力というものがでてくる。、、自力を尽くすと、おのずと、他力がそこに表れる。」

NHK「婦人の時間 この人この道」(1964年5月14日)という30分番組を見て、94歳の鈴木大拙の語りをじっくりと聞くことができた。インタビュアーは、若き日の犬養道子だった。

  • 近代人は有限に苦しめられている。無限に対する憧憬が薄くなっている。
  • 無限に関心を持つのが宗教だ。
  • 生命は無限に通じている、そういう自覚を持つ。
  • 科学とは小さな網のようなもので、網に掛かったものだけを扱っている。有限だ。科学を万能と考えるのは近代人のフィクションに過ぎない。
  • 即今だけが事実だ。過去も、現在も、未来も無い。現在を生きるのみ。
  • 西洋の分別知、分析ではなく、そのまま丸飲みにする。そこに安心(あんじん)がある。
  • 言葉は実物では無い。
  • 小さなものを見ること万物をみる。それが日本の特色。それが世界文化に貢献できるところ。−−−−−−−−−−−

今日の収穫
柳井正

  • 「企業が何のために存在をしているのか。インプットよりもアウトプットが大きくならなければ、単なる資源の浪費に過ぎない。あらゆる国の人々にチャンスがある今の時代に、自らの頭で考え、一生やり遂げるべきことを考え出すことが大切である」
  • 「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」

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「名言との対話」8月25日。松前重義

  • 「若き日に 汝の思想を培え 若き日に 汝の体躯を養え 若き日に 汝の知識を磨け 若き日に 汝の希望を星につなげ」
    • 松前 重義(1901年(明治34年)10月24日 - 1991年(平成3年)8月25日)は、日本の官僚・政治家・科学者・教育者・工学博士。東海大学創立者。日本社会党衆議院議員内村鑑三に師事した。日ソ交流を進めた。
    • 逓信省の工務局長の時に東条英機内閣の打倒運動を行い、42歳で懲罰招集を受けて二等兵として南方戦線に送られ九死に一生を得る。このエピソード一つとっても松前という人物の凄みがわかる。
    • 東北帝大工学部電気工学科を卒業し、逓信省に技官として入省した松前は、役人生活に失望する。この時、内村鑑三の聖書研究会でその講義に接し、「この人こそわが人生の師だ」と心に決める。ダルガス父子による復興を描いた「デンマルク国の話」とともに、グルントウィヒというデンマークの宗教思想家・教育者を知る。グルントウィヒは国民高等学校という私塾的な場を設け青年の教育を行った。これが松前重義が教育を生涯の分野と定める動機となった。
    • 懲罰召集から帰り終戦になって、戦後通信院総裁になった技術者・松前は理科系を中心に文科系も併設する総合大学の建設にとりかかる。1946年4月に通信院総裁を辞任し、5月に旧制東海大学を発足させる。翌年1947年1月に公職追放。1951年6月公職追放解除。1950年、新制東海大学発足。1952年、1月東海大学理事長、6月学長。
    • 松前は生涯を通じて柔道に関係した人生を送り、国際柔道連盟会長などを歴任したが、山下泰祐を発見し育てた人でもあった。ロサンゼルスオリンピックで金メダル、全日本選手権9連覇、203連勝のまま引退という記録を打ち立てた山下を東海大相模に入れて鍛えた。山下は学業にも励み、全校で一番の成績もあげている。
    • 松前重義の数奇なる人生、目標を成し遂げる人生を眺めると、その気迫に粛然とする。熊本の記念館の柔道道場に掲げてあった冒頭の言葉は、「若者よ、心身を鍛え未来に備えよ」ということだろう。