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村田沙耶香「コンビニ人間」(文藝春秋)

村田沙耶香「コンビニ人間」(文藝春秋)を読了。

コンビニ人間

コンビニ人間

直近の芥川賞受賞作。150ページほどの小著なので軽く詠むことができた。

「独身、処女、コンビニアルバイトという三重苦」の36歳の「私」は、コンビニ店員として生まれた。
発達障害気味の主人公は、コンビニで働くことで、世界の部品になることができたと思っている。
職場の中で、だんだん「正常で普通」な人たちから削除されていく。
18年間のコンビニアルバイトを辞めると、世界とつながらなくなる。24時間、コンビニとつながっているから日常がコントロールできていたことがわかる。基準を失ってしまい、生活は乱れる。

そして最後にお客としてコンビニに入ると、生き生きと自分が蘇る。
「コンビニの「声」が聞こえる」「コンビニからの天啓を伝達しているだけなのだった」「私は人間である以上にコンビニ店員なんです」「私はコンビニ店員という動物なんです」

文春の「芥川賞選評」では、「小説のおもしろさのすべてが、ぎゅっと凝縮されている」「傑作」「上質のユーモア」「異物を排除する正常さの暴力」人々の怪しさが生々しく見えてくる」「独特のユーモアと描写力」「おそろしくて、可笑しくて、大胆で、緻密」と高く評されている。

異物から見た正常な社会の異常さがあぶり出されている作品だ。
世界に合わせようと努力している彼らから見ると、私たちの社会と日常と常識はおかしく見えるのだろう。違う世界からみた私たちの世界の姿は、奇妙で滑稽だ。こういうタイプの若い人たちと接するとき、このことを意識したいと思う。
外国人からみた日本というような発想に通じる作品であり、逆転現象をユーモアで包んで見せた手腕を評価したい。面白いが、考えさせる作品だ。


「名言との対話」8月29日。大河内正敏

  • 「いいんだよ 出し惜しみしていては いつまでたっても欧米には追いつけん!」
    • 大河内 正敏(1878年(明治11年)12月6日 - 1952年(昭和27年)8月29日)は、物理学者であり実業家である。東京府出身。子爵。理化学研究所理研)の3代目所長、貴族院議員。女優の河内桃子は孫。
    • 東大教授、貴族院議員、原敬内閣の海軍省政務次官、そして1921年山川健次郎東大総長の推薦で若干43歳で理化学研究所の所長となる。高峰譲吉理研を提唱、渋沢栄一は副総裁として財政を後押しした理研は63社、121工場もの企業群を擁するコンツェルンを形成したが、人材輩出の面で素晴らしい業績をあげている。
    • 長岡半太郎は物理学の中心、仁科芳雄は現代物理学の父と呼ばれ、朝永振一郎湯川秀樹を育て、福井謙一にも影響を与えた、田中角栄理研産業団の工場建設を請け負ったし、日本医師会の武見太郎も理研の研究員だった。リコーの創業者の市村清も仕事をしていたことがある。
    • 危機に直面して選ばれた第3代所長の大河内正敏の改革は際立っていた。ピラミッド構造を粉砕し、主任研究員制度を導入。大学教授との兼任も認めた。学問の垣根を取り払う。女性の研究員を増員。組織改革のテーマは「自由と平等」だった。そこで得たエネルギーを技術移転による製品開発に向け、一大コンツエルンを築く。基礎研究と応用技術による起業が理研精神の両輪だった。
    • STAP細胞騒動で話題になった理研は大河内所長の時代に飛躍している。大河内の周辺は皆心から大河内を尊敬し、愉快に研究に没頭することができたという。「人を見る眼が特に秀でて、偽物は直ちに見破られ真面目な研究者をよく保護し育成した」と言われた。その大河内所長は、発見や発明もどんどんオープンにし国家の発展を科学面から支えたのである。