三菱一号館美術館。「レオナルドXミケランジェロ展」

  三菱一号館美術館。「レオナルドXミケランジェロ展」。

イタリアルネッサンス時代の二人の天才の対比を中心とした70点の「素描」がテーマの企画展。「万能人」・レオナルド・ダ・ビンチ(1452ー1519年。67才で没)。「神のごとき」・ミケランジェロ(1475ー1564年。88才で没)。同時代を生きたライバルの二人の年齢差は23才。

二人の気質、考え方の対比が興味深い。「素描」は、レオナルドにとってはデッサン、ドローイングであり、ミケランジェロにとってはデザイン、アイデア、構想であった。向かって左がレオナルドの素描、右はミケランジェロの素描。

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 二人の言葉を拾う。

レオナルド:顔は内面を写す鏡。人相学。観相学。人体比率研究。それが「最後の晩餐」につながる。静的。「アントニオ、素描しなさい。素描しなさい、アントニオ。素描しなさい。時間を無駄にしないで」

ミケランジェロ:物語の中で生きる人物を描く。動的。それが「最後の審判」につながる。「画家は、まず優れた師匠の手になる素描を模写することに習熟しなければならない」

 レオナルド:絵画は彫刻よりも優位。「平らなものを立体的に魅せるという技量、、、。画家はこの点で彫刻家を凌駕している」

ミケランジェロ:絵画と彫刻は等価値。「絵画と彫刻の両者は同じ才知に由来するものですから、お互いに仲直りして、大げさな議論は止めにしたいものである」

ミケランジェロ「絵画彫刻は共に素描から生まれた娘である」

 レオナルド:動物、特に馬。ミケランジェロ:人間の裸体。建築。

 大理石でできたミケランジェロキリスト像

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  夜は、日本地域社会研究所。第三木曜日に編集企画会議を行うことになった。

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 レオナルド「充実した生命は長い。充実した日々はいい眠りを与える。充実した生命は静寂な死を与える」

 

「名言との対話」7月20日。糸川英夫「人生でもっとも大切なのは失敗の歴史である」

糸川 英夫(いとかわ ひでお、1912年7月20日- 1999年2月21日)は、日本工学者。専門は航空工学宇宙工学ペンシルロケットの開発者であり、「日本の宇宙開発・ロケット開発の父」と呼ばれる。

第二次大戦では日本海軍は「ゼロ戦」が代表的な戦闘機で、堀越二郎が中心になって開発した。陸軍の名機「はやぶさ」を開発したのが糸川英夫である。この二人は当時の軍国少年の英雄だった。

糸川はバレエ占星術チェロヴァイオリンなど様々なことに興味を持った。故・富田勲の手がけた新プロジェクト「ドクター・コッペリア」は日本の宇宙探査機ハヤブサとロケット開発の父・イトカワの物語である。バレーに本気で挑戦していてバレー団に入団した62歳の川博士から「いつかホログラフィーと踊ってみたい」と言われる。当時はテクノロジーが実在していなかったが、富田は初音ミクを使って実現しようとした。2012年に冨田が『惑星 ULTIMET EDITION』をリリースした際には、「木星」と「土星」の間に冨田が糸川を偲んで作曲した「イトカワはやぶさ」が追加されている。富田勲の死後に完成した『ドクター・コッペリア』はテクノロジーとアートが融合した、バレリーナとバーチャルシンガーの競演になった。

2003年小惑星 25143 が糸川の名にちなんでイトカワと命名された。この小惑星が「イトカワ」と命名されたのは、日本の探査機はやぶさが打ち上げられて(命名されて)三ヶ月後である。イトカワには探査機はやぶさが訪れ、調査とサンプルリターンを行った。自らの名前がつけられた小惑星に、自らが開発に関係した戦闘機)と同名の探査機が着陸したことになるという素敵な物語である。そして2010年はやぶさは地球に無事帰還し英雄となった。糸川の遺体は砂漠に埋葬された。

 著書『逆転の発想』はベストセラーになり、「逆転の発想」という言葉が世に広まった。糸川は勉強する時に解答などで間違った所を消しゴムで消すなという勉強法を提唱した。また「不具合」という言葉は糸川ロケットが失敗した時の富士精密工業による造語である。戦闘機開発、ロケット開発の最前線で大活躍した天才技術者・糸川英夫の教訓が「失敗」であるのは興味深い。厖大な失敗の歴史の蓄積の上に、逆転の発想で新しい技術が誕生するということだろう。