新しい読書スタイルにトライ中。

「名言との対話」の「平成命日編」は、執筆する日に亡くなった平成時代を生きた人を選び、その人の自伝、伝記、著書を読んで、その人の遺した名言を選び、人生の軌跡とともに、その名言と対話するという、やや凝った企画である。

2016年の「命日編」や2017年の「誕生日編」は長い歴史の中らの人選であり、比較的楽でもあったのだが、この30年間に亡くなった人という狭い範囲なので、難度が高く、続かないのではないかと始めた当初は危惧したが、なんとか4ヶ月続いている。

平成の30年間に亡くなった人とは、主として昭和時代を生き抜いた人である。私と同時代を並走した先達でもあるから、私との縁や関係を極力書き付けることで私の自分史的な面も意識している。

最近亡くなった人であるから人物記念館はない場合がほとんどだ。したがって、資料は書籍が中心になる。読むべき本を積み上げて、読み続ける毎日となった。積ん読だ。風呂でも、トイレでも、テレビの前のソファでも、電車の中でも、読んで彼らの人生と対話している。

一度目は印象に残った所に線を引き、二度目は線を引いた部分の中でも使いたい箇所にチェックをいれ、三度目にその中から必須の言葉が存在するページの端を折る。この読み方は能動的な読み方であるから、精読的でもある。そして、人生観や仕事観のその人らしい名言を選ぶ。ネットの情報も合わせて人生の軌跡を確認し、最後に名言と対話し、得た教訓や私自身の感想を記す。これが毎日の日課となっている。

人に焦点を当てて読むという強制的な読書は、普段なら関心を持たない本を読むことになる。この乱読的な読書体験は、思いがけない発見と興奮の連続だ。イメージとはまったく違う人間像が現れることが多い。やむを得ず、まったく知らない人に取り組むこともあり、それはそれで新鮮な体験である。有名人であっても、業績や人生の軌跡、そしてその人の人生観はほとんど知らないこともわかった。

芸術家、学者、役者、小説家、タレント、政治家、落語家、歌手、評論家、編集者、アスリート、、などさまざまなジャンルの人が対象であるから、知識も増えてその分野の事情に明るくなるという副産物も豊かである。

1994年に『知的生産のための 入門 読書の技術』(大和出版)を上梓したことがある。読みたい本をどう探すのか、本をどう選ぶのか、本の内容をどう整理すればよいのか、人間の幅を広げるためにどんな本をどう読めばよいのか、について実践的なノウハウを書いている。

今年実行している「業」のような読書体験は、それとは違う新しい読書の方法ではないだろうか。人物に焦点をあてたアウトプットのための読書であるが、これを何と呼べばよいのだろうか。2018年が終わるまでには命名したいと思う。 

 以下、連休中に読んだ書物を何冊かあげてみよう。

 演劇の力 ―私の履歴書

白洲正子自伝 (新潮文庫)

忘れえぬ人びと (第1巻) (粕谷一希随想集(全3巻))

私の家は山の向こう―テレサ・テン十年目の真実 (文春文庫)

米原万里ベストエッセイ (1) (角川文庫)

41歳寿命説―死神が快楽社会を抱きしめ出した (センチュリープレス)

 長洲一二『ただ人は情あれ』(草思社)。

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 「名言との対話(平成命日編)。5月3日。横山ノック「パンパカパーン、パンパンパ、パンパカパン。今週のハイライト」

横山 ノック(よこやま ノック、本名 山田 勇(やまだ いさむ)、1932年1月30日 - 2007年5月3日)は、お笑いタレント参議院議員大阪府知事

 立川談志一門で、「立川禿談次」という高座名も持つ。上岡龍太郎らと結成した「漫画トリオ」で一世を風靡した。「パンパカパーン、パンパンパ、パンパカパン。今週のハイライト」で始まる横山ノックの姿はテレビでよくみかけた。お笑いのネタ探しで、ニュースに触れ続け、政治への関心が育っていき、参議院議員通常選挙全国区無所属で立候補し当選し、以降連続4回当選する。ノックはタレントと議員の二刀流で活躍した。

1995年には参議院議員を辞職した後、「無党派」であることを旗印に、大阪府知事に当選する。当初は議会のほとんどが野党というオール野党状態ではあったが、不良債権が大幅に膨らんで事実上死に体であった木津信用組合に対して業務停止命令を発し、また行政改革への積極的な取り組みなど、一定の実績を積み上げていった。知名度と愛着の持たれるキャラクターから府民の人気は高く、加えてAPEC首脳会議の成功など実績も評価されたことで、1999年の二期目選挙では自民党など主要政党が対立候補の擁立を見送らざるを得ないほど人気があり、235万票という新記録の得票数で事実上の信任投票となる形で当選した。

ところが、 2000年8月に、その選挙運動中の女子大生スタッフへのセクハラと強制わいせつ容疑が浮上。大阪地方裁判所は、わいせつ行為を認定した他、横山の逆告訴や法廷外での発言を名誉毀損であると認定し、女子大学生に対して1100万円(セクハラ訴訟としては過去最高額)の支払いを命じた。また大阪地方検察庁から強制わいせつ罪で在宅起訴され、知事を辞職した。懲役1年6か月・執行猶予3年の有罪判決を受け、築きあげてきた地位と名誉を一気に失うことになった。

相方だった横山パンチこと上岡龍太郎は弔辞の中で「六甲のベースキャンプ ハウスボーイ時代にはサミーと呼ばれ、宝塚新芸座では「みたひさし」と名のり、「あきたけいすけ」から「横山ノック」、漫画トリオになったノックさん、、、漫才師から参議院議員 大阪府知事から、最後は被告人にまでなったノックさん、、」とノックの人生を総括している。

横山ノックはテレビでの「パンパカパーン、パンパンパ、パンパカパン。今週のハイライト」で人気が出て、そして最後はテレビで「君達はいったいいつまで大阪府知事をいじめたら気が済むんだ!?」と記者達に激高しどなった姿がテレビで流れてとどめを刺されたのである。晩節を汚すとすべての功績が消えてしまう。